猛獣もうじゅう)” の例文
旧字:猛獸
それでどんなあらえびすでも、虎狼とらおおかみのような猛獣もうじゅうでも、田村麻呂たむらまろ一目ひとめにらまれると、たちまち一縮ひとちぢみにちぢみあがるというほどでした。
田村将軍 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
しかし、その優雅ゆうがな横笛は、時にとって身を守るつるぎともなり、時には、猛獣もうじゅうのような野武士のぶしどもを自由自在にあやつるムチともなる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
富士男、ゴルドン、ドノバンの三人は、もしも猛獣もうじゅう蕃人ばんじんなどが襲来しゅうらいしはせぬかと、かわるがわる甲板に、見張りをすることにきめた。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
石のとりいをくぐって、しばらくいきますと、社殿しゃでんの前に、石のコマイヌが石の台の上に、ぶきみな猛獣もうじゅうのようにうずくまっていました。
夜光人間 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
けだし聖人せいじん君子くんし高僧こうそう等より見れば、普通にわれわれの賞賛する武勇は猛獣もうじゅうの勇気に類したもので、孟子もうしのいうところの匹夫ひっぷの勇に過ぎぬ。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「ふふ、それはわたしの勝手よ、親愛なる猛獣もうじゅうさん。そんなわけでしたら、わたし、ピョートル・ヴァシーリエヴィチにお願いするわ。……」
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
しかし、かずの子をべすぎたり、さけを落して歩いたり、猛獣もうじゅうながら、どことなく、くまにはこっけいな、かわいいところがあるではありませんか。
くまと車掌 (新字新仮名) / 木内高音(著)
猟師りょうしは、しばらくあるいてはみみをすまし、また、しばらくあるいてはみみをすましたのです。そして、あたりに、猛獣もうじゅうのけはいはしないかと、ようすをさぐったのでした。
猟師と薬屋の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「さぁー、いらっしゃい、いらっしゃい。猛獣もうじゅうつかいがライオンとすもうをとります。さぁさぁ。」
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
「そんな猛獣もうじゅうみたいな顔をしていないで、さあわかれろわかれろ。」
決闘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
河また河、谷また谷、ぼうぼうたる草は身を没して怪きん昼もく、そのあいだ猛獣もうじゅう毒蛇どくじゃのおそれがある、蕃人ばんじん襲来しゅうらいのおそれもある。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
裾野すそのにいたころは富士ふじ山大名やまだいみょうむすめ——胡蝶陣こちょうじん神技しんぎ——猛獣もうじゅうのような野武士のぶしのむれを自由自在じざいにうごかした咲耶子である。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『わたしの猛獣もうじゅうさん』と呼ばれたり、時によっては簡単に、『わたしの』と呼ばれたりしていたが、彼女のためとあらば火の中へも飛びみかねない男である。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
動物園どうぶつえんでは、ふだいてあるような、猛獣もうじゅう性質せいしつがなくなってしまうと、このしろいくまの処分しょぶんこまりました。このことを、あるりこうな香具師やしみました。
白いくま (新字新仮名) / 小川未明(著)
さてその後からは、てつのおりに入ったライオン、とらくまなどの猛獣もうじゅうが車に乗せられて来ます。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
その大きな白犬が、キャンキャンと、まるで猛獣もうじゅうにでも出あったような、悲鳴をあげました。
天空の魔人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
四人は大きな湖水のへんを歩きつづけた、だがこの日もまた、一頭の猛獣もうじゅうにもあわず、一点の人の足あとも発見しなかった。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
どんなんでいるとりも、はしっているうさぎも、またくまや、おおかみのような猛獣もうじゅうも、たいていまとをつけたものは、そらさず一ぱつめるというほど上手じょうずでありました。
おおかみと人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ぞう、ライオン、とらをはじめ、動物の数が九十八種、曲芸きょくげいの馬が十八頭、曲芸師きょくげいしが三十と六人、げきとダンスの少年少女が二十と八人、それにくわえて世界的大魔術師だいまじゅつし、世界的猛獣もうじゅう使い
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
それは人間ではなくて、四つ足で歩く猛獣もうじゅうでした。トラです。黄金のトラです。
超人ニコラ (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
おや、この地下室には猛獣もうじゅうでもかってあるのかしら、と思っていますと、男は
大金塊 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
くまや、おおかみのような猛獣もうじゅうは、かえってやさしいなさけがあるもんだ。
おおかみと人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
猛獣もうじゅうのうなり声です。
魔法人形 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)