片肌かたはだ)” の例文
取て夫婦二人を無理むりに一つ駕籠にのせ是でよしとて半四郎はむか鉢卷はちまき片肌かたはだぎ何の苦もなく引擔ひつかつぎすた/\道をかけながら酒屋をさして急ぎけり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
人心地ひとごこちもなく苦しんだ目が、かすかいた時、初めて見た姿は、つややかな黒髪くろかみを、男のようなまげに結んで、緋縮緬ひぢりめん襦袢じゅばん片肌かたはだ脱いでいました。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
庄屋しょうやらしいはかまをつけ、片肌かたはだぬぎになって、右の手にゆがけかわひもを巻きつけた兄をそんなところに見つけるのも、お民としてはめずらしいことだった。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「お前の相談はまだ聞いていねえが、この万吉が、命にかけてもきっとひきうけるから、現在俺の弱っている一つの大事へ、ウンと片肌かたはだをぬいでくれないか」
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
偏袒右肩へんたんうけん、——つまり右の片肌かたはだを脱いでいるみ姿であるから、衣は左の肩から斜に右の胴下にまかれ、そのすそは結跏趺坐した円い膝をおおうて台座に垂れさがっている。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
片肌かたはだぬぎに團扇うちわづかひしながら大盃おほさかづき泡盛あはもりをなみ/\とがせて、さかなは好物こうぶつ蒲燒かばやき表町おもてまちのむさしへあらいところをとのあつらへ、うけたまわりてゆく使つかばん信如しんによやくなるに、そのやなることほねにしみて
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
守人は、いつのまにか片肌かたはだぬいで大上段。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
今為朝いまためともといわれたのはどんな人物かと見ると、たけたかく、色浅ぐろい二十四、五さい武士ぶしである。黒い紋服もんぷく片肌かたはだをぬぎ、手には、日輪巻にちりんまき強弓ごうきゅうと、一本の矢をさかしまににぎっていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
片肌かたはだをおとした凛々りりしいふたりの射手いては、もう支度したくのできている場所ばしょに身がまえをつくって、弓懸ゆがけをしめ、気息きそくをただし、左手にあたえられた強弓ごうきゅうを取って、合図、いまやと待ちうけている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)