トップ
>
煤色
>
すすいろ
ふりがな文庫
“
煤色
(
すすいろ
)” の例文
眼下の海面はドス黒き
煤色
(
すすいろ
)
に泡立って、機関部艦底より浮び出ずる油の汚水によって、海底の浪の渦巻きは凄絶極まりなき様相を呈し
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
木村は「非常持出」と書いた札の張ってある、
煤色
(
すすいろ
)
によごれた戸棚から、しめっぽい書類を出して来て、机の上へ二山に積んだ。
あそび
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
夫人はさっさと
竈
(
かまど
)
部屋の横を通り、
煤色
(
すすいろ
)
のこの囲いから外へ出た。西の丸へつづく庭山の辺り、赤松の疎林の下の一亭である。
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
府中へ来ると、
煤色
(
すすいろ
)
に暮れた。時間よりも寧空の黯い為に町は最早火を
点
(
とも
)
して居る。早や一粒二粒夕立の先駆が落ちて来た。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
けれどもそれは
全
(
まった
)
く、作者に
未知
(
みち
)
な
絶
(
た
)
えざる
驚異
(
きょうい
)
に
値
(
あたい
)
する世界
自身
(
じしん
)
の
発展
(
はってん
)
であって、けっして
畸形
(
きけい
)
に
捏
(
こ
)
ねあげられた
煤色
(
すすいろ
)
のユートピアではない。
『注文の多い料理店』新刊案内
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
▼ もっと見る
眼の
凹
(
くぼ
)
んだ、
煤色
(
すすいろ
)
の、背の低い首斬り役が重た
気
(
げ
)
に斧をエイと取り直す。余の
洋袴
(
ズボン
)
の膝に二三点の血が
迸
(
ほとば
)
しると思ったら、すべての光景が
忽然
(
こつぜん
)
と消え
失
(
う
)
せた。
倫敦塔
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
グロテスクな装飾をもった背の高い建物は、
煤色
(
すすいろ
)
の夜霧のなかに、ブルブル震えながら立ち並んでいた。
ネオン横丁殺人事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
やがて、その望みが叶うて、とある道具屋で、駕籠舁が一本の
煤色
(
すすいろ
)
した尺八を求めてくれました。
大菩薩峠:19 小名路の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
民子は今日を別れと思ってか、髪はさっぱりとした
銀杏返
(
いちょうがえ
)
しに薄く化粧をしている。
煤色
(
すすいろ
)
と紺の細かい
弁慶縞
(
べんけいじま
)
で、羽織も長着も同じい
米沢紬
(
よねざわつむぎ
)
に、品のよい
友禅縮緬
(
ゆうぜんちりめん
)
の帯をしめていた。
野菊の墓
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
と、左門は、
削
(
こ
)
けた、蒼白い頬へ皺を畳み
煤色
(
すすいろ
)
の唇を
幽
(
かす
)
かにほころばせて微笑した。
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
衣紋
(
えもん
)
背の
半
(
なかば
)
に抜け、帯は毒々しき
乳
(
ち
)
の上に
捩上
(
よれあが
)
りて
膏切
(
あぶらぎ
)
ったる
煤色
(
すすいろ
)
の肩露出せり。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
薄白い雪の上へ、
煤色
(
すすいろ
)
に小さな足跡が残された。
寄席
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
深く被はれたる
煤色
(
すすいろ
)
の
仮漆
(
エルニ
)
こそ
ヒウザン会とパンの会
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
鬼の国から吹き上げる風が石の壁の
破
(
わ
)
れ
目
(
め
)
を通って
小
(
ささ
)
やかなカンテラを
煽
(
あお
)
るからたださえ暗い
室
(
へや
)
の天井も
四隅
(
よすみ
)
も
煤色
(
すすいろ
)
の
油煙
(
ゆえん
)
で
渦巻
(
うずま
)
いて動いているように見える。
倫敦塔
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
日中
(
ひなか
)
は
硝子
(
ビイドロ
)
を焼くが如く、
嚇
(
かっ
)
と晴れて
照着
(
てりつ
)
ける、が、
夕凪
(
ゆうなぎ
)
とともに
曇
(
どん
)
よりと、水も空も疲れたように、ぐったりと雲がだらけて、
煤色
(
すすいろ
)
の飴の如く
粘々
(
ねばねば
)
と
掻曇
(
かきくも
)
って、日が暮れると墨を流し
浮舟
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「そうさ、斧を
磨
(
と
)
ぐだけでも骨が折れるわ」と歌の
主
(
ぬし
)
が答える。これは背の低い眼の
凹
(
くぼ
)
んだ
煤色
(
すすいろ
)
の男である。「
昨日
(
きのう
)
は美しいのをやったなあ」と髯が惜しそうにいう。
倫敦塔
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
煤
漢検準1級
部首:⽕
13画
色
常用漢字
小2
部首:⾊
6画
“煤”で始まる語句
煤
煤煙
煤掃
煤烟
煤竹
煤払
煤拂
煤黒
煤臭
煤埃