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溺愛
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できあい
ふりがな文庫
“
溺愛
(
できあい
)” の例文
と、乳人は蔭で云い暮らしていたが、そう云う父が、それほど
溺愛
(
できあい
)
していた酒を、或る時からふっつり止めてしまったのであった。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
しかし葉子に対しては倉地は前にもまさって
溺愛
(
できあい
)
の度を加え、あらゆる愛情の証拠をつかむまでは
執拗
(
しつよう
)
に葉子をしいたげるようになった。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
いかに刀剣に対して眼のない
溺愛
(
できあい
)
の大膳亮とはいえ、もし彼が、この北境
僻邑
(
へきゆう
)
にすら今その名を轟かせている江戸南町奉行の大岡越前が
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
お金に対する
溺愛
(
できあい
)
は日毎に募って、一にもお金、二にもお金と、奉公人達が目の隅で笑うのも気が付かないという有様でした。
新奇談クラブ:08 第八夜 蛇使いの娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
生命や感覺があるやうに
半
(
なか
)
ば考へながら、私がこの小さな玩具を、どんな馬鹿げた眞實で、
溺愛
(
できあい
)
してゐたかを、今思ひ出すことは
難
(
むづ
)
かしい。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
▼ もっと見る
前にもいいましたように、この年になるまで父母の
溺愛
(
できあい
)
を受けて、ここまで旅行に出るということは、私にとっては容易な
業
(
わざ
)
ではないのです。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
夜そのもののために夜を
溺愛
(
できあい
)
するというのが、私の友の気まぐれな好み(というよりほかに何と言えよう?)であった。
モルグ街の殺人事件
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
お美しいこと、父帝が
溺愛
(
できあい
)
しておいでになることなどを始終聞かされていたのがこの恋の
萌芽
(
きざし
)
になったのである。
源氏物語:35 若菜(下)
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
私たちがどうしてあの優しき、善き父に不平を抱くことが出来よう。父が私たちを労苦に鍛えることのできなかったのはそのあふるる
溺愛
(
できあい
)
のためであった。
光り合ういのち
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
兵部はその子を
溺愛
(
できあい
)
していた。六十万石分割のことも、東市正が三十万石の領主になる、という夢を実現したいからである。雅楽頭もそこへ
罠
(
わな
)
を仕掛けた。
樅ノ木は残った:03 第三部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
彼の
治
(
じ
)
し
難
(
がた
)
い悪癖は彼の
溺愛
(
できあい
)
する静子夫人を対象として、
猛威
(
もうい
)
をたくましくし始めたものでありましょう。
陰獣
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
例えば、こうやって、自分を田舎へよこして置いてくれる彼の心持にしろ、彼は、伸子になら何をされてもよいほど
溺愛
(
できあい
)
しているから、放っているのであろうか。
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
私を
溺愛
(
できあい
)
する叔母であることを知ればこそ、苦笑しながらも、それを有難いと思って、
享
(
う
)
け入れている私との間には、いわば、
睦
(
むつ
)
まじさが平凡な眠りに
墜
(
お
)
ちて行くのを
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
彼女の身のうえの思い設けぬ不幸でさえもあると思わるるほど
溺愛
(
できあい
)
している恋慕の底に、何かしらいつも遊戯とかまたは冷たい批判とかいうものとは
異
(
ちが
)
った作家気質というようなもので
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
一たん愛するとなると、程度を忘れて
溺愛
(
できあい
)
せずには居られない彼の性質が、やがて彼等の家庭の習慣になつて、彼も彼の妻も人に物言ふやうに、犬と猫とに言ひかけるのが常であつた……。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
勝平は、もういつの間にか、親切な
溺愛
(
できあい
)
する夫になり切ってしまっていた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
一刻一刻の、美しさの完成だけを願って居ります。生活を、生活の感触を、
溺愛
(
できあい
)
いたします。女が、お茶碗や、きれいな柄の着物を愛するのは、それだけが、ほんとうの生き甲斐だからでございます。
皮膚と心
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
總領の伊太郎の不愛嬌で
醜
(
みにく
)
くて、親達への當りもよくなかつたのと比べて、次男の伊三郎の、人付きの良さと、男振りの拔群なのを
溺愛
(
できあい
)
し
銭形平次捕物控:232 青葉の寮
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
スデニ
倦怠期
(
けんたいき
)
ヲ通リ過ギテイル時期ニナッテ、私ハ昔ニ倍加スル情熱ヲモッテ妻ヲ
溺愛
(
できあい
)
スルヿガデキル。………
鍵
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
一方の孫を
溺愛
(
できあい
)
して、ああしたまだ少年の者に結婚を許そうなどとは思いもよらぬことです。それにしても、だれがあなたにそんなことを言ったのでしょう。
源氏物語:21 乙女
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
吉近侯のみならず、係り家来の立場としては、迷惑だったものだろう、が、迷惑にも拘らず吉近侯は彼女を
溺愛
(
できあい
)
し、顔中を引掻き傷にされながらも、敢えて屈せず
長屋天一坊
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
ことさら快活に振る舞おうとしていたには違いないけれども、葉子の倉地に対する
溺愛
(
できあい
)
は葉子をしてほとんど自然に近い容易さをもってそれをさせるに充分だった。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
この女優もまた奥様と同種類の犬を非常に
溺愛
(
できあい
)
している、という聞き込みを得ましたことなのです。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
其処に面白からぬ夫婦関係が
醸成
(
じょうせい
)
されつつあった事は、
何人
(
なんぴと
)
も想像し得るじゃないか。事実、博士はひそかに
妾宅
(
しょうたく
)
を構えて何とかいう
芸妓
(
げいしゃ
)
上りの女を
溺愛
(
できあい
)
しているんだ。
一枚の切符
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
いかなる歎願も聴き入れないばかりか、かえって普賢像に対する愛着心を
煽
(
あお
)
られて、朝夕自分の側に置いて、寸刻も離さないほどの
溺愛
(
できあい
)
ぶりだったのです。
銭形平次捕物控:134 仏師の娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
祖父母が彼女を
溺愛
(
できあい
)
のあまり、一度ならず彼女に婿を取って木場家のあととりにしようとし、そのため親類じゅうの騒ぎになり、家族会議が幾たびもおこなわれた。
季節のない街
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
教育のないのを自分のひけめにして、父から圧制されるのを天から授かった運命のように思っているらしかった。末子の純次に対しては無智な動物のような
溺愛
(
できあい
)
を送っていた。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
云うまでもなく、彼はこの様に妻の静子を責めさいなんではいましたけれど、それは決して彼女を憎むが
故
(
ゆえ
)
ではなく、寧ろ静子を
溺愛
(
できあい
)
すればこそ、この惨虐を
行
(
おこな
)
ったのであります。
陰獣
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
主人
(
あるじ
)
の入道は信仰生活をする精神的な人物で、
俗気
(
ぞっけ
)
のない愛すべき男であるが、
溺愛
(
できあい
)
する一人娘のことでは、源氏の迷惑に思うことを知らずに、注意を引こうとする言葉もおりおり
洩
(
も
)
らすのである。
源氏物語:13 明石
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
伯爵夫人の底知れぬ贅沢さが夫人を
溺愛
(
できあい
)
していた夫伯爵を破産に導いて、伯爵の死はおそらく自殺がその真相だろうというもっぱらの取沙汰であったが、それはあまりにも酷に過ぎた
穿
(
うが
)
ち方にもせよ
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
寢卷や布團の贅は、町人には少し
奢
(
おご
)
りの沙汰と思はれる程で、主人金兵衞の
溺愛
(
できあい
)
振りが思ひやられます。
銭形平次捕物控:161 酒屋忠僕
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
生れた世子は
亀丸
(
かめまる
)
と名づけられたが、信濃守はたいそうな
溺愛
(
できあい
)
ぶりで、しぜん生母のひな女も大切にされ、その名の一字を取って
奈々
(
なな
)
の方と呼ばれるようになったし
屏風はたたまれた
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
園に対しては
舐
(
な
)
めるような
溺愛
(
できあい
)
を示すのに引きかえて、兄に対してはことごとに気持を悪るくしているらしい愛憎の烈しい母が、二人の中に挾まって、二人の間をかえってかき乱していた。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
これほどまでにこの女を
溺愛
(
できあい
)
している自分を源氏は不思議に思った。
源氏物語:04 夕顔
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
父はおみきを
溺愛
(
できあい
)
した。おまえはおふくろにそっくりだ、と云っては晩酌の向うに坐らせて、酒や
肴
(
さかな
)
を
喰
(
た
)
べさせた。おみきは五歳ぐらいから、酒の味に馴染んだものだ。
枡落し
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
叔父萬兵衞の
溺愛
(
できあい
)
の的になつたことは當然で、そのお喜代が、人もあらうに町人から見れば外道としか思はれないやくざ者の勝太郎と
契
(
ちぎ
)
つたことが、どんなに萬兵衞の忿怒だつたか
銭形平次捕物控:231 鍵の穴
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
葉子はまた自分の父がどれほど葉子を
溺愛
(
できあい
)
してくれたかをも思ってみた。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
名は父の幼名をとって小太郎と付けたが、よく肥えた丈夫な子で、妻は殆んど
溺愛
(
できあい
)
していた。
竹柏記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
後で店の者や近所の人の
噂
(
うわさ
)
を集めると、総兵衛はこの美しいお道の方を
溺愛
(
できあい
)
して、同じような関係の姪でありながら、これに
聟
(
むこ
)
を取って、相模屋の跡取りにするつもりであったようです。
銭形平次捕物控:142 権八の罪
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
そして三男頼胤になると、まるで人が違ったように
溺愛
(
できあい
)
した。
新潮記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
“溺愛”の意味
《名詞》
溺 愛(できあい)
むやみに可愛がること。
(出典:Wiktionary)
溺
常用漢字
中学
部首:⽔
13画
愛
常用漢字
小4
部首:⼼
13画
“溺”で始まる語句
溺
溺死
溺死人
溺死体
溺死者
溺没
溺器
溺楽
溺兵
溺酔