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ゆかた
ふりがな文庫
“
湯帷子
(
ゆかた
)” の例文
しかしMはいつのまにか
湯帷子
(
ゆかた
)
や
眼鏡
(
めがね
)
を着もの脱ぎ場へ置き、海水帽の上へ
頬
(
ほお
)
かぶりをしながら、ざぶざぶ
浅瀬
(
あさせ
)
へはいって行った。
海のほとり
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
その娘は女中だったと見えて、稽古に隣へ来ていると云う外の娘達と同じような
湯帷子
(
ゆかた
)
を着た上に紫のメリンスでくけた
襷
(
たすき
)
を掛けていた。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
師匠は茶を啜り了えると立って、勝手元から水の張ったバケツを下げてきて、
湯帷子
(
ゆかた
)
の裾をからげて濡れ縁のところから庭へ水を打ちはじめた。
痀女抄録
(新字新仮名)
/
矢田津世子
(著)
この死骸も
炎
(
ほのほ
)
に焼かれた顔は目鼻もわからぬほどまつ黒だつた。が、
湯帷子
(
ゆかた
)
を着た体や
痩
(
や
)
せ細つた手足などには少しも焼け
爛
(
ただ
)
れた
痕
(
あと
)
はなかつた。
大正十二年九月一日の大震に際して
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
女中は
湯帷子
(
ゆかた
)
に
襷
(
たすき
)
を肉に食い入るように掛けて、戸を一枚一枚戸袋に繰り入れている。額には汗がにじんで、それに乱れた髪の毛がこびり附いている。
あそび
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
▼ もっと見る
主人も客も
湯帷子
(
ゆかた
)
に着更へて、縁側近く据わつて、主人と背の高い
赭顔
(
あからがほ
)
とが
棋
(
ご
)
を打つのを、小男の客が見てゐる。
金貨
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
乞食は
呆気
(
あつけ
)
にとられたのか、古
湯帷子
(
ゆかた
)
の片膝を立てた儘、まじまじ相手を見守つてゐた。もうその眼にもさつきのやうに、油断のない
気色
(
けしき
)
は見えなかつた。
お富の貞操
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
白のジャケツやら
湯帷子
(
ゆかた
)
の上に
絽
(
ろ
)
の羽織やら、いずれも略服で、それが皆
識
(
し
)
らぬ顔である。下足札を受け取って上がって、
麦藁帽子
(
むぎわらぼうし
)
を預けて、紙札を
貰
(
もら
)
った。
余興
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
更に又何分かの後、一人になつた新公は、古
湯帷子
(
ゆかた
)
の膝を抱いた儘、ぼんやり台所に坐つてゐた。暮色は
疎
(
まば
)
らな雨の音の中に、だんだん此処へも迫つて来た。
お富の貞操
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
これもお
揃
(
そろい
)
の、
藍色
(
あいいろ
)
の勝った
湯帷子
(
ゆかた
)
の
袖
(
そで
)
が
翻
(
ひるがえ
)
る。足に
穿
(
は
)
いているのも、お揃の、赤い
端緒
(
はなお
)
の草履である。
杯
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
新公は
咄嗟
(
とつさ
)
に身を
躱
(
かは
)
さうとした。が、傘はその途端に、古
湯帷子
(
ゆかた
)
の肩を打ち据ゑてゐた。この騒ぎに驚いた猫は、鉄鍋を一つ蹴落しながら、
荒神
(
くわうじん
)
の棚へ飛び移つた。
お富の貞操
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
なる程フランネルのシャツの上に
湯帷子
(
ゆかた
)
を著ている。細かい格子に日を
遮
(
さえぎ
)
られた、薄暗い窓の
下
(
もと
)
に、手習机の古いのが据えてあって、そこが君の席になっている。
二人の友
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
Mは長ながと寝ころんだまま、
糊
(
のり
)
の強い宿の
湯帷子
(
ゆかた
)
の袖に
近眼鏡
(
きんがんきょう
)
の玉を拭っていた。仕事と言うのは僕等の雑誌へ毎月何か書かなければならぬ、その創作のことを
指
(
さ
)
すのだった。
海のほとり
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
かれは
湯帷子
(
ゆかた
)
にさえ
領垢
(
えりあか
)
の附くのを
厭
(
いと
)
って、鬢や
髱
(
たぼ
)
の障る襟の所へ、
手拭
(
てぬぐい
)
を折り掛けて置く位である。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
と同時に
湯帷子
(
ゆかた
)
の胸から、桃色の
封筒
(
ふうとう
)
にはいっている、小さい手紙を抜いて見せた。
母
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
石田は
襦袢袴下
(
じゅばんこした
)
を着替えて又夏衣袴を着た。常の日は、寝巻に
湯帷子
(
ゆかた
)
を着るまで、このままでいる。
鶏
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
僕のこう尋ねた時にはMはもう
湯帷子
(
ゆかた
)
を引っかけ、僕の隣に腰を下ろしていた。
海のほとり
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
夕凪
(
ゆうなぎ
)
の日には、日が暮れてから暑くて内にいにくい。さすがの石田も
湯帷子
(
ゆかた
)
に
着更
(
きか
)
えてぶらぶらと出掛ける。初のうちは
小倉
(
こくら
)
の町を知ろうと思って、ぐるぐる廻った。
鶏
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
ハムモックの側に立っているのは、
上海
(
シャンハイ
)
の旅館にいた時より、やや血色の
好
(
い
)
い
敏子
(
としこ
)
である。髪にも、夏帯にも、
中形
(
ちゅうがた
)
の
湯帷子
(
ゆかた
)
にも、やはり明暗の斑点を浴びた、
白粉
(
おしろい
)
をつけない敏子である。
母
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
もう締めてある戸を開けさせて、巡査が何か掛け合った。話は直ぐに
纏
(
まと
)
まったらしい。中から頭を角刈にして、布子の下に
湯帷子
(
ゆかた
)
を重ねて着た男が出て来て、純一を迎え入れた。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
けれどもこの死骸はどう云ふ
訣
(
わけ
)
か、焼け残つたメリンスの
布団
(
ふとん
)
の上にちやんと足を
伸
(
の
)
ばしてゐた。手も
亦
(
また
)
覚悟を
極
(
き
)
めたやうに
湯帷子
(
ゆかた
)
の胸の上に組み合はせてあつた。これは苦しみ
悶
(
もだ
)
えた死骸ではない。
大正十二年九月一日の大震に際して
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
欄干に赤い
襟裏
(
えりうら
)
の附いた
著物
(
きもの
)
や
葡萄茶
(
えびちゃ
)
の
袴
(
はかま
)
が
曝
(
さら
)
してあることがある。赤い袖の
肌襦袢
(
はだじゅばん
)
がしどけなく投げ掛けてあることもある。この衣類の
主
(
ぬし
)
が夕方には、はでな
湯帷子
(
ゆかた
)
を著て、
縁端
(
えんばな
)
で凉んでいる。
二人の友
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
“湯帷子”の解説
湯帷子(ゆかたびら)は、平安時代に入浴の際に着用されていた和服の一種。麻の単衣で、浴衣の原型とされる。
(出典:Wikipedia)
湯
常用漢字
小3
部首:⽔
12画
帷
漢検1級
部首:⼱
11画
子
常用漢字
小1
部首:⼦
3画
“湯帷子”で始まる語句
湯帷子掛