トップ
>
湯壺
>
ゆつぼ
ふりがな文庫
“
湯壺
(
ゆつぼ
)” の例文
湯壺
(
ゆつぼ
)
は
花崗石
(
みかげいし
)
を
畳
(
たた
)
み上げて、十五
畳敷
(
じょうじき
)
ぐらいの広さに仕切ってある。
大抵
(
たいてい
)
は十三四人
漬
(
つか
)
ってるがたまには誰も居ない事がある。
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
開放
(
あけはな
)
ったガラス戸の外は一望の緑、眼下には
湯壺
(
ゆつぼ
)
への
稲妻型廊下
(
いなづまがたろうか
)
の長い屋根、こんもり茂った樹枝の底に、
鹿股川
(
かのまたがわ
)
の流れが
隠顕
(
いんけん
)
する。脳髄がジーンと
麻痺
(
まひ
)
して行く様な、
絶
(
た
)
え
間
(
ま
)
なき早瀬の
響
(
ひびき
)
。
吸血鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
顔は見えないが、
湯壺
(
ゆつぼ
)
のなかで
粋
(
いき
)
な声で
源太節
(
げんたぶし
)
を唄っているのがひとり。
顎十郎捕物帳:08 氷献上
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
水落つ、たたと………
浴室
(
よくしつ
)
の真白き
湯壺
(
ゆつぼ
)
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
しかし、静かな春の夜に、雨さえ興を添える、山里の
湯壺
(
ゆつぼ
)
の中で、
魂
(
たましい
)
まで春の
温泉
(
でゆ
)
に浮かしながら、遠くの三味を無責任に聞くのははなはだ嬉しい。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
両足を
湯壺
(
ゆつぼ
)
の中にうんと踏ん張って、ぎゅうと
手拭
(
てぬぐい
)
をしごいたと思ったら、
両端
(
りょうはじ
)
を握ったまま、ぴしゃりと、音を立てて
斜
(
はす
)
に
膏切
(
あぶらぎ
)
った背中へあてがった。
二百十日
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
意外な廊下を曲ったり、思いも寄らない
階子段
(
はしごだん
)
を降りたりして、目的の
湯壺
(
ゆつぼ
)
を眼の前に
見出
(
みいだ
)
した彼は、実際一人で自分の座敷へ帰れるだろうかと疑った。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
余は
湯壺
(
ゆつぼ
)
の
傍
(
わき
)
に立ちながら、
身体
(
からだ
)
を
濡
(
し
)
めす前に、まずこの異様の広告めいたものを読む気になった。真中に
素人
(
しろうと
)
落語大会と書いて、その下に
催主
(
さいしゅ
)
裸連
(
はだかれん
)
と記してある。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
自分は湯に
入
(
い
)
りながら、嫂が今日に限ってなんでまた
丸髷
(
まるまげ
)
なんて
仰山
(
ぎょうさん
)
な頭に
結
(
ゆ
)
うのだろうと思った。大きな声を出して、「姉さん、姉さん」と
湯壺
(
ゆつぼ
)
の中から呼んで見た。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
浴衣
(
ゆかた
)
のまま、
風呂場
(
ふろば
)
へ下りて、五分ばかり偶然と
湯壺
(
ゆつぼ
)
のなかで顔を浮かしていた。洗う気にも、出る気にもならない。第一
昨夕
(
ゆうべ
)
はどうしてあんな心持ちになったのだろう。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
煙
(
けむ
)
の出る
湯壺
(
ゆつぼ
)
に漬けられ、いよいよ目的の人は眼前にいるという事実が分り、目的の主意は
明日
(
あした
)
からでも実行に取りかかれるという
間際
(
まぎわ
)
になって、急に第一が顔を出した。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
わが住む部屋も、欄干に
倚
(
よ
)
ればやはり同じ高さの二階なのには興が催おされる。
湯壺
(
ゆつぼ
)
は
地
(
じ
)
の下にあるのだから、
入湯
(
にゅうとう
)
と云う点から云えば、余は三層楼上に
起臥
(
きが
)
する訳になる。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
すでに裸になって、
湯壺
(
ゆつぼ
)
の中に
浸
(
つか
)
った
後
(
あと
)
の彼には、この引続きから来る一種の予期が絶えず働らいた。彼は苦笑しながら、
昨夕
(
ゆうべ
)
と
今朝
(
けさ
)
の間に自分の経過した変化を比較した。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
控所へくれば、すぐ、うらなり君が眼に付く、
途中
(
とちゅう
)
をあるいていても、うらなり先生の様子が心に
浮
(
うか
)
ぶ。温泉へ行くと、うらなり君が時々
蒼
(
あお
)
い顔をして
湯壺
(
ゆつぼ
)
のなかに
膨
(
ふく
)
れている。
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
温泉へ着いて、三階から、
浴衣
(
ゆかた
)
のなりで
湯壺
(
ゆつぼ
)
へ下りてみたら、またうらなり君に逢った。
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「さすが年の功だね、何にも言わずに
巻煙草
(
まきたばこ
)
を五六十本半紙にくるんで、失礼ですが、こんな
粗葉
(
そは
)
でよろしければどうぞお呑み下さいましと云って、また
湯壺
(
ゆつぼ
)
へ下りて行ったよ」
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
湯
常用漢字
小3
部首:⽔
12画
壺
漢検準1級
部首:⼠
12画
“湯”で始まる語句
湯
湯槽
湯気
湯呑
湯女
湯屋
湯治
湯殿
湯沸
湯浴