浴室ゆどの)” の例文
尤も何方が雲かどろかは、其れは見る人の心次第だが、兎に角著しく変った。引越した年の秋、お麁末そまつながら浴室ゆどのや女中部屋を建増した。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
浴室ゆどのでは神崎、朝田の二人が、今夜の討論会は大友が加わるので一倍、春子さんを驚かすだろうと語り合って楽しんで居る。
恋を恋する人 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
浴室ゆどのだ、浴室ゆどのだ。ておいで。と女中ぢよちゆう追遣おひやつて、たふむやうに部屋へやはいつて、廊下らうか背後向うしろむきに、火鉢ひばちつかまつて、ぶる/\とふるへたんです。……老爺おぢいさん。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
森閑しんかんとした浴室ゆどの長方形ちやうはうけい浴槽ゆぶね透明すきとほつてたまのやうな温泉いでゆ、これを午後ごゝ時頃じごろ獨占どくせんしてると、くだらない實感じつかんからも、ゆめのやうな妄想まうざうからも脱却だつきやくしてしまふ。
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
みやこなる父母ふぼかへたまひぬ。しうとしうとめらぬきやく許多あまたあり。附添つきそ侍女じぢよはぢらひにしつゝ、新婦よめぎみきぬくにつれ、浴室ゆどのさつ白妙しろたへなす、うるはしきとともに、やまに、まちに、ひさしに、つもれるゆきかげすなり。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
其杖は今カタミになって、墓守が家の浴室ゆどのの心張棒になって居る。ある爺さんは、困った事には手が長くなる癖があった。さまで貧でもないが、よく近所のものを盗んだ。野菜物を採る。甘藷を掘る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
そして神崎、朝田の二人が浴室ゆどのへ行くと間もなく十八九の愛嬌のある娘が囲碁のへやに来て
恋を恋する人 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)