浮出うきだ)” の例文
床から半身を抜出ぬけだしたまま、血にまみれて死んでいる恐ろしく魅惑的な美女——小杉卓二の愛人夢子の死骸をクッキリ浮出うきださせているのでした。
勿論もちろん、描いた人物を判然はっきり浮出うきださせようとして、この彩色さいしょく塗潰ぬりつぶすのは、の手段に取って、か、か、こうか、せつか、それは菜の花のあずかり知るところでない。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おりから淡々あわあわしいつきひかり鉄窓てっそうれて、ゆかうえあみたるごと墨画すみえゆめのように浮出うきだしたのは、いおうようなく、凄絶せいぜつまた惨絶さんぜつきわみであった、アンドレイ、エヒミチはよこたわったまま
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
これをめぐって飾られている火薬に、朱書しゅがきされた花火という字が茫然と浮出うきだしている情景は、子供心に忘れられない記憶の一つで、暗いものの標語に花火屋の行燈あんどんというが、全くその通りである。
亡び行く江戸趣味 (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
曇日くもりびなので蝙蝠かほもりすぼめたまゝにしてゐるせいか、やゝ小さい色白いろじろの顏は、ドンヨリした日光ひざしの下に、まるで浮出うきだしたやうに際立きわだってハツキリしてゐる。頭はアツサリした束髪そくはつしろいリボンの淡白たんぱくこのみ
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
頗類西洋畫すこぶるせいやうぐわにるゐす。)とあるのを注意ちういすべし、はしらかべも、あをしろ浮出うきだすばかり。
画の裡 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
をりから淡々あは/\しいつきひかり鐵窓てつさうれて、ゆかうへあみたるごと墨畫すみゑゆめのやうに浮出うきだしたのは、ふやうなく、凄絶せいぜつまた慘絶さんぜつきはみつた、アンドレイ、エヒミチはよこたはつたまゝいきころして
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
浮出うきだしたように真中へあらわれて、後前あとさきに、これも肩から上ばかり、爾時そのときは男が三人、ひとならびに松の葉とすれすれに、しばらく桔梗ききょう刈萱かるかやなびくように見えて、段々だんだん低くなって隠れたのを、何か
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)