さかのぼ)” の例文
すなはち宮に入りまさずて、その御船を引ききて、堀江にさかのぼらして、河のまにまに山代やましろに上りいでましき。この時に歌よみしたまひしく
然れば団十郎父子の正月に演じた狂言は別である。四世薪水の大功記の事は演劇史に見えない。是等は根本資料にさかのぼつて検せなくてはならない。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
其處そこぼく昨日きのふチエホフの『ブラツクモンク』をよみさしておもはずボズさんのことかんがし、その以前いぜん二人ふたり溪流たにがは奧深おくふかさかのぼつて「やまめ」をつたことなど
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
劒沢をさかのぼり、八時十三分、長次郎谷の出合。大なる羚羊かもしかを見る。十時、別山裏の平地に達し、小憩して昼食。十時三十五分、出発。十一時、別山乗越着。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
わづかに其地をれば味ひならず、その味ひ美なるものは北海より長江ちやうかうさかのぼりて困苦こんくしたるのにあたれるゆゑならん。うを急浪きふらう困苦くるしめば味ひかならず甘美うまきもの也。
此より上にさかのぼれば、即ち上牢下牢関、皆な山水清絶の処なり。孤峰は即ち甘泉寺山、孝女泉及び祠ありて万竹の間に在り、亦た幽邃喜ぶ可し。峡人歳時遊観頗る盛。
わたくしは京水本系図の来歴よりさかのぼつて水津本系図の来歴に及び、水津本が京都で歿した水津官蔵の手より、江戸にゐるむすめの手にわたつたことを言つた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
ほりにつきたる時は漁師れふしもこれをとらず、たま/\るものあれどもしひてはせぬ事也。女魚めなさへとらざれば男魚をなは其所をさらず。さけの河にさかのぼるは子をうまんとて也。
病氣びやうきくない、』『あめりさうですから』など宿やどものがとめるのもかず、ぼく竿さをもつ出掛でかけた。人家じんかはなれて四五ちやうさかのぼるとすでみちもなければはたけもない。
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
産終うみをはるまでの困苦こんくのために尾鰭をひれそこなやせつかれ、ながれにしたがひてくだり深淵ふかきふちある所にいたればこゝにしづつかれやしなひ、もとのごとく肥太こえふとりてふたゝながれさかのぼる。
さておしょうは既にいないので、大いに失望した上に、おしょうの身の上の不幸を箱根細工の店で聞かされたので、不快に堪えず、流れをさかのぼってたにの奥まで一人で散歩して見たが少しも面白くない
恋を恋する人 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)