いまし)” の例文
ここにその后に語らひて、「いまし思ほすことありや」とのりたまひければ、答へて曰さく「天皇おほきみの敦きめぐみかがふりて、何か思ふことあらむ」
酔つて疲れて私の瞼はイラ痒いとは云へ、人よいましがそのやうなことを気にするのであれば、あゝ、それは世間をばかり心の中に相手として置いてゐるからだ。
いましはた我に先だちて行かむ、はた我や汝に先だちて行かむ、こたえて曰く吾先だちてみちひらき行かむ云々、因りて曰く我を発顕あらわしつるは汝なり、かれ汝我を送りて到りませ、と〉とて
また『紀』の一書に、「吾是汝之幸魂奇魂也」(われはこれ、いまし幸魂さきみたま奇魂くしみたまなり)とあり。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
うみぎなむ時も渡らなむかく立つ浪に船出すべしや」(巻九・一七八一)、「たらちねの母にさはらばいたづらにいましも吾も事成るべしや」(巻十一・二五一七)等である。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
おお、めざまされた魂の、つつましい情感よ、その優しいひびきよ、そのめでたさと静もりよ。恋の初めての感動の、とろけるばかりのよろこびよ。——いましらはそも、今いずこ、今いずこ?
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
駿河の海磯辺むしべに生ふる浜つづらいましをたのみ母にたがひぬ
富士 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
なんぢ、我が子よ、いましもし、此の難関に処しも得ば
葉染はぞめひめひて、れにしいまし
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
むちうて、いましむなしく見えなせども
独絃哀歌 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
いましが友ならず、いざ行かなむ。
北村透谷詩集 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
いまし帰らず その影を
乞食学生 (新字新仮名) / 太宰治(著)
いまし緑の蔭も朽ちせず
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ここに天皇、その孃子に問ひたまはく、「いましは誰が子ぞ」と問はしければ、答へて白さく、「丸邇わに比布禮ひふれ意富美おほみが女、名は宮主矢河枝みやぬしやかはえ比賣」
いまし等ともに闇くして、且はひめやか。汝が底を探りたる、者とてはなく、汝がゆたけき内奥を、知るものとてなかりけり、さまで汝等秘密をば、守らんこと敏なりき!
海の詩:――人と海―― (新字旧仮名) / 中原中也(著)
垂乳根たらちねははさはらばいたづらにいましわれことるべしや 〔巻十一・二五一七〕 作者不詳
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
葉染の姫に見ぞひてれにしいまし
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
いましもいつしか散りざらむ
北村透谷詩集 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
何處いづこいまししのびて』と
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
いまし千歳の時に嘯き
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
天皇すなはちその孃子に詔りたまはく、「吾明日あすのひ還りまさむ時、いましの家に入りまさむ」と詔りたまひき。かれ矢河枝比賣、委曲つぶさにその父に語りき。
今日けふはたいまし、——ああ無花果いちじゆく
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
永劫とはに問はじいましが名は
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
いましの長き春なくば
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
今日はたいまし、——ああ無花果。
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
そのときいまし白銀しろがね
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
いましを、ひとり黄鶲きびたき
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
いましが夏のたはぶれを
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
いましを、ひとり黄鶲きびたき
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)