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氷雪
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ひようせつ
彼等は
其の
冬の
季節に
於て
生命を
保つて
行くのには
凡ての
機能を
停止して
引き
緊らねば
成らぬ。それでなければ
彼等は
氷雪の
爲に
枯死せねばならぬ。
彼は
長い
時間氷雪の
間を
渉つた
後、一
杯の
冷たい
釣瓶の
水を
注ぐことによつて
快よい
暖氣を
其の
赤く
成つた
足に
感ずる
樣に、
僅少な
或物が
彼の
顏面の
僻んだ
筋を
伸るに十
分であるのに
其の
日も
拂曉から
空が
餘りにからりとして
鈍い
軟かな
光を
有たなかつた。
毎日吹き
捲くる
疾風が
其の
遠い
西山の
氷雪を
含んで
微細に
地上を
掩うて
撒布したかと
思ふやうに
霜が
白く
凝つて
居た。