おも)” の例文
前にも言へりし如く我が彼女を愛するは其骨にあらず、其皮にあらず、其たましひにてあれば、我は其魂をこの囚牢のうちに得なむとおもふのみ。
我牢獄 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
内典ほとけのみのり興隆おこさむとおもふ。方将まさ寺刹てらを建てむときに、はじめて舎利を求めき、時に、汝が祖父司馬達等しばたちと便すなわち舎利をたてまつりき。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
只単に孤児が肉親の情愛をおもふやうな単純な心持で、何となく一種の思慕を感じてゐたに過ぎなかつたのだ。
乳の匂ひ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
後に、虎、その柱をりて、針を取りて走去げぬ。高麗国こまのくに、得志が帰らんとおもこころを知りて、あしきものを与えて殺す
進んでは、かかる天然の城廓のうちに籠れる神霊の座に到らむとおもふ精進の一念、つひに棄つるに難かり。
松浦あがた (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
ここを以ちてその父母、その人を知らむとおもひて、その女にをしへつらくは、「赤土はにを床の邊に散らし、卷子紡麻へそをを針にきて、その衣のすそに刺せ」とをしへき一一
豈離只今這皮袋[菴中不死の人を識らんとおもわば、あに只今いまのこの皮袋を離れんや]を引いて、肉体の主人たる不生不滅者は、たとい誰の(釈迦や弥勒の)それであっても
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
今はハヤ須臾しゆゆも忍びがたし、臆病者と笑はば笑へ、恥も外聞もらばこそ、予はあわたゞしく書斎を出でて奥座敷のかた駈行かけゆきぬ。けだし松川の臥戸ふしどに身を投じて、味方を得ばやとおもひしなり。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
私は今後六囘に亙つて此の題目の下に、過去の支那に現はれた四人の大人物、即ち孔子・始皇帝・張騫・諸葛亮四人の事蹟を紹介せうとおもふ。今日は民衆萬能の時代で、最早偉人英雄の時代でない。
今日は少しこの世のことについてお話しいたそうとおもいます。
古、ところの漁夫、そぞろ好奇のこころにかりたてられ、洞窟のきはまるはてを探らむとおもひ、一日舟を進め入れたりしなり。冥界の大魔がみくだす潮の流は矢よりも疾し。
松浦あがた (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
臣は今日出家いへでして、陛下きみの為めに功徳のりのことおこなはむとおもふ。天皇ゆるしたまふ。即日そのひ出家してころもたまふ。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
「吾は既に先の事を忘れたり。然れどもいまし志を守り命を待ちて、徒に盛の年を過ぐししこと、これいと愛悲かなし」とのりたまひて、御心のうちに召さむとおもほせども
何となく琴曲をおもふ時に薩摩さつま琵琶びはを聞くが如きの感あるなれ。
高麗国こまのくに、得志が帰らんとおもこころを知りて、あしきものを与えて殺す
[仏性の義を知らんとおもわば
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
かれここに帝紀を撰録し、舊辭くじ討覈たうかくして、僞を削り實を定め、後葉のちのよつたへむとおも