檜木ひのき)” の例文
檜木ひのきさはら明檜あすひまき𣜌ねず——それを木曾きそはうでは五木ごぼくといひまして、さういふえたもりはやしがあのふか谷間たにあひしげつてるのです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
屑屋くづやの久吉さんと、御浪人の檜木ひのきさん、あの二人は、いつかはきつと私の命を狙ふに違ひないと父さんは言つて居ました」
勿体もつたいないこつちや、勿体ないこつちや、これも将棋を指すおかげだす。」と言つたといふくらゐ、総檜木ひのき作りの木のも新しい立派な場所であつた。
聴雨 (新字旧仮名) / 織田作之助(著)
と、その気味の悪い笑い声は暗鬱あんうつたる処女林に鳴り渡り、三倍ほどもある反響となって彼の耳へそのまま返って来た。すると、それに驚いたものか、傍の檜木ひのき空洞うつろからふくろうが一羽飛び出した。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
木曾きそ檜木ひのき名所めいしよですから、あのうすいたけづりまして、かさんでかぶります。そのかさあたらしいのは、檜木ひのき香氣にほひがします。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
檜木ひのき官之助は氣がせく樣子です。散々の勞苦と貧乏で、隨分氣むづかしくはなつて居るにしても、こんな男が案外の正直者かもわかりません。
観音堂かんのんどうの屋根はころびかかり、檜木ひのき六本、すぎ六本、都合十二本の大木が墓地への通路で根扱ねこぎになったと言って見せるものがある。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
平次は度肝どぎもを拔かれました、檜木ひのき官之助の細目に開いた格子へ手をかけて、ガラリとやると、頭の上から小氣味の良い一かつはされたのです。
馬籠の荒町あらまちにある村社の鳥居とりいのために檜木ひのき背伐せぎりしたと言って、その始末書を取られるような細かい干渉がやって来る。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
十日ばかり前、お隣りに住んでいらつしる御浪人の檜木ひのきふう之進樣が、を打ちに入らつしやいましたが——檜木樣と私は、お互に下手ながら互先たがひせんで、一と月に一度や二度は手合せをいたします。
やまにはおほきな檜木ひのきはやしもありますから、そのあつ檜木ひのきかはいたのかはりにして、小屋こや屋根やねなぞをくこともありました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
それは彼が巴里から持って帰った荷造りの箱板を材料にした旅の記念で、ふただけを別の檜木ひのきの板で造らせたものであった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
檜木ひのきさわら明檜あすひ高野槇こうやまきねずこ——これを木曾では五木ごぼくという。そういう樹木の生長する森林の方はことに山も深い。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
もみつがさわらけやきくり、それから檜木ひのきなぞの森林の内懐うちぶところに抱かれているような妻籠の方に、米の供給は望めない。妻籠から東となると、耕地はなおさら少ない。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
あの張板なぞは、宅でまだ川向に居ました時分、わざわざ檜木ひのきで造らせたんですよ。長く住む積りでしたからねえ。とにかく、道具屋に一度見せまして、直段ねだん
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
あそこの小屋の前に檜木ひのきの実がしてあった、ここに山の中らしい耳のとがった茶色な犬がいた、とそんなことを語り合って行く間にも楽しい笑い声が起こった。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
時にはもみ檜木ひのきすぎなどの暗い木立ちの間に出、時にはくり、その他の枯れがれな雑木の間の道にも出た。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
今さらのように豊富な檜木ひのきさわら明檜あすひ高野槇こうやまき、それからねずこなどの繁茂する森林地帯の深さに驚き、それらのみずみずしい五木がみな享保年代からの御停止木であるにも驚き
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
檜木ひのき類の枝を伐採する場所と、元木もとぎの数をとりしらべて、至急書面で届け出ろとありますよ。つまり、木曾山は尾州の領分だから、松明たいまつの材料は藩から出るという意味なんですね。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)