横縞よこじま)” の例文
灰色の毛皮の敷物のはしを車の後に垂れて、横縞よこじま華麗はなやかなる浮波織ふはおり蔽膝ひざかけして、提灯ちようちん徽章しるしはTの花文字を二個ふたつ組合せたるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
泥を拭くと、赤い段だらの横縞よこじまを書いた玩具の竹笛で、まだ少しもいたんでいないところを見ると、昨今池の水際みずぎわの泥に突き差したものでしょう。
保護色のような薄絹の手袋。暗褐色あんかっしょくに赤に横縞よこじまのあるアンクル・サックス。色眼鏡いろめがね。魚のえらのように赤いガーター。
新種族ノラ (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
ロミオ いや/\、あさらする雲雀ひばりぢゃ、ナイチンゲールのこゑではない。戀人こひびとよ、あれ、おやれ、意地いぢわる横縞よこじまめがひがしそらくも裂目さけめにあのやうなへりけをる。
サヤサヤという羽音はおとといっしょに、一羽の小鳥が窓から飛び込んできて、書机デスクのそばの止まり木にとまった。背中が葡萄色で、つばさに黒と白の横縞よこじまのある美しい懸巣かけすである。
キャラコさん:06 ぬすびと (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
しゃ横縞よこじまはかま突張つっぱらかして、折革鞄おりかばんわきに、きちんと咽喉のどもとをしめた浅葱あさぎの襟を扇であおぐと、しゃりしゃりと鳴る薄羽織の五紋が立派さね。——この紋が御見識だ。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
鉛色なまりいろの谷窪の天地に木々はがさのように重くすぼまって、白いしずくをふしだらに垂らしていた。崖肌は黒く湿って、またその中に水を浸み出す砂の層が大きな横縞よこじまになっていた。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
若い男だが、毛糸で編んだ派手な太い横縞よこじまのセーターに、ズボンはチョコレート色の皮ものらしいのをはき、大きな顔の頭の上に、小さい黄いろい鳥打帽をちょこんと乗せている。
そろそろ青みがかって来た叡山苔えいざんごけやすために、シャベルをもって砂を配合した土に、それを植えつけていると、葉子はくろずんだあおと紫の鱗型うろこがた銘仙めいせんの不断着にいつもの横縞よこじまの羽織を着て
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
あの紙凧かみだこのあがっている空地だ。横縞よこじまのどてらを着て、ゆっくりゆっくり歩いている。なぜ、君はそうとめどもなく笑うのだ。そうかい。似ているというのか。——よし。それなら君に聞こうよ。
彼は昔の彼ならず (新字新仮名) / 太宰治(著)
あの横縞よこじまの仕事著をきたはねのある採集者たちが四角八面に飛びまわってここの山陰、かしこの野原、花園や果樹林に咲き乱れたいろいろな花からたんねんにみとって運びかえったこんじきの甘露
胆石 (新字新仮名) / 中勘助(著)