柴垣しばがき)” の例文
るもつもるも風情ふぜいかな、未開紅みかいこううめ姿すがたつぼみゆきはらはむと、おき炬燵ごたつより素足すあしにして、化粧けはひたる柴垣しばがきに、には下駄げたつまさばく。
月令十二態 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
暗い竹叢たけむらに覆われた山家の柴垣しばがきに沿うている暗がりである。光秀の影は、十間ほど後に、釘付くぎづけになったように立ちすくんでいた。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
左右が柴垣しばがきになっている小路こみちを通り、浅い流れも踏み越えて行く馬の足音なども忍ばせているのであるが、薫の身についた芳香を風が吹き散らすために
源氏物語:47 橋姫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
弟のミヅハワケの命(反正天皇)、河内の多治比たじひ柴垣しばがきの宮においでになつて天下をお治めなさいました。
あるひはまた細流さいりゅうに添ふ風流なる柴垣しばがきのほとりに侍女を伴ひたる美人佇立たたずめば、彼方かなたなる柴折戸しおりどより美しき少年の姿立出たちいで来れるが如き、いづれも情緒纏綿じょうしょてんめんとして尽きざるものなり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
田畝を越すと、二間幅の石ころ道、柴垣しばがき樫垣かしがき要垣かなめがき、その絶え間絶え間にガラス障子、冠木門かぶきもん、ガス燈と順序よく並んでいて、庭の松に霜よけのなわのまだ取られずについているのも見える。
少女病 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
みずくきのあとも細々ほそぼそと、ながしたようにきつらねた木目もくめいた看板かんばんに、片枝折かたしおりたけちた屋根やねから柴垣しばがきへかけて、葡萄ぶどうつる放題ほうだい姿すがたを、三じゃくばかりのながれにうつした風雅ふうがなひとかま
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「漢土渡来の月宮殿げっきゅうでん大和名やまとな柴垣しばがきじゃと申されました」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
訪ねあてた農家の柴垣しばがきには、夕顔が白く咲いていた。さしのぞくと、幸いにも、その人はいま外の風呂小屋から出て来て、母屋おもやの土間へはいりかけていた。
剣の四君子:05 小野忠明 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
庭に通した水の流れなどが地方官級の家としてはってできた住宅である。わざと田舎いなかの家らしい柴垣しばがきが作ってあったりして、庭の植え込みなどもよくできていた。
源氏物語:02 帚木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
あれを、柴垣しばがき犱谷くるみだに、大島、と伝って、高浜で泊るつもりの処を、鉱泉があると聞いて、大笹へ入ったので。はじめから歩行あるくつもりではありましたが、景色のいい処ほど、道は難渋です。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)