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撓
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たわゝ
この
共同湯の
向う
傍は、
淵のやうにまた
水が
青い。
對岸の
湯宿の
石垣に
咲いた、
枝も
撓な
山吹が、ほのかに
影を
淀まして、
雨は
細く
降つて
居る。
室に、
玉鳳は
鈴を
啣み、
金龍は
香を
吐けり。
窓に
挂くるもの
列錢の
青瑣なり。
素柰、
朱李、
枝撓にして
簷に
入り、
妓妾白碧、
花を
飾つて
樓上に
坐す。
下へ
行くと
學士の
背廣が
明いくらゐ、
今を
盛と
空に
咲く。
枝も
梢も
撓に
滿ちて、
仰向いて
見上げると
屋根よりは
丈伸びた
樹が、
對に
並んで
二株あつた。
李の
時節でなし、
卯木に
非ず。