おし)” の例文
そしてまあ、その継母はまた何だって遠まわしに、貢さんのせいのようにおしつけて聞かしたんだろうね。お前さんにどうかしてくれろというのかね。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
燈火ともしびてんずるころ、かの七間四面の堂にゆかたはだかの男女おし入りて、きりをたつるの地なし。も若かりしころ一度此堂押にあひしが、上へあげたる手を下へさぐる事もならざるほどにせまたちけり。
しばらおし問答の末彼はつひに満枝をらつし去れり。あとに貫一は悪夢の覚めたる如くしきり太息ためいきいたりしが、やがてん方無げにまくらに就きてよりは、見るべき物もあらぬかたに、果無はてしなく目を奪れゐたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
おして全く文右衞門が盜人なりと思ひ居けるゆゑお政に向ひお前の亭主ていしゆと云者は恐ろしき大盜人おほぬすびと大方まだ/\油屋の百兩許りにてはあるまじ所々方々にてかせぎたる事もあらん今迄此方の仲間なかまには他人の物を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「どうですか、余りおしつけがましい申分もうしぶんではありますが、心はおなじ畜生でも、いくらか人間の顔に似た、口を利く、手足のある、廉平の方がいですか。」
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
燈火ともしびてんずるころ、かの七間四面の堂にゆかたはだかの男女おし入りて、きりをたつるの地なし。も若かりしころ一度此堂押にあひしが、上へあげたる手を下へさぐる事もならざるほどにせまたちけり。
御取込にて御話も成ずと有ておして申も如何いかゞなれども御母樣の御身の上につききふに御話申さねば成ぬ事故鳥渡ちよつとなりとも御目に掛りたく存じますれば御邪魔じやまながら最一おう御取次下されよと頼みけるに彼男は點頭うなづきて奧へ入しのみ待ども/\何の返事へんじもなく彼是するうちはや淺草寺の初夜を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
岸にはおしならべて柳の樹植えられたり。若樹のこずえより、老樹おいきに、居所いどころかわるがわる、月の形かからむとして、動くにや、風のぎたる柳の枝、下垂れて流れの上にゆらめきぬ。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さてはあつらへたまひし如く家に送りたまふならむとおしはかるのみ、わが胸のうちはすべて見すかすばかり知りたまふやうなれば、わかれのしきも、ことのいぶかしきも、取出とりいでていはむはやくなし。
竜潭譚 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
さてはあつらえたまいしごとく家に送りたまうならむとおしはかるのみ、わが胸のうちはすべて見すかすばかり知りたまうようなれば、わかれの惜しきも、ことのいぶかしきも、取出でていわむはやくなし。
竜潭譚 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)