掛声かけごゑ)” の例文
旧字:掛聲
グラン・ブルヷアルの大通おほどほりの人浪に交つて若い巴里パリイの女から「愛らしい日本人」んな掛声かけごゑとコンフエツチの花の雪とを断えず浴びせられて、はじめの程こそ専ら受身で居たが
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
うち這入はいると足場あしばの悪い梯子段はしごだんが立つてゐて、中程なかほどからまがるあたりはもう薄暗うすぐらく、くさ生暖なまあたゝか人込ひとごみ温気うんき猶更なほさら暗い上のはうから吹きりて来る。しきりに役者の名を呼ぶ掛声かけごゑきこえる。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
といふ掛声かけごゑとゝもに、制吒迦せいたかごとあらはれて、写真機しやしんき附属品ふぞくひんを、三金剛杵こんがうしよごと片手かたてにしながら、片手かたてで、おびつかんで、短躯小身たんくせうしん見物けんぶつちうつておよがして引上ひきあげた英雄えいゆうである。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
師匠ししやうのおとよ縁日えんにちものゝ植木鉢うゑきばちならべ、不動尊ふどうそん掛物かけものをかけたとこうしろにしてべつたりすわつたひざの上に三味線しやみせんをかゝへ、かしばちで時々前髪まへがみのあたりをかきながら、掛声かけごゑをかけてはくと
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)