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掛声
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かけごゑ
毎
夜グラン・ブルヷアルの
大通の人浪に交つて若い
巴里の女から「愛らしい日本人」
斯んな
掛声とコンフエツチの花の雪とを断えず浴びせられて、
初の程こそ専ら受身で居たが
内へ
這入ると
足場の悪い
梯子段が立つてゐて、
其の
中程から
曲るあたりはもう
薄暗く、
臭い
生暖い
人込の
温気が
猶更暗い上の
方から吹き
下りて来る。
頻に役者の名を呼ぶ
掛声が
聞える。
といふ
掛声とゝもに、
制吒迦の
如く
顕はれて、
写真機と
附属品を、三
鈷と
金剛杵の
如く
片手にしながら、
片手で、
帯を
掴んで、
短躯小身の
見物を
宙に
釣つて
泳がして
引上げた
英雄である。
師匠のお
豊は
縁日ものゝ
植木鉢を
並べ、
不動尊の
掛物をかけた
床の
間を
後にしてべつたり
坐つた
膝の上に
三味線をかゝへ、
樫の
撥で時々
前髪のあたりをかきながら、
掛声をかけては
弾くと