手剛てごわ)” の例文
あとの敵の方が手剛てごわいと見たからである。何分にも芒が深いので、それが眼口めくちを打ち、手足に絡んで、思うように働くことが出来ない。
半七捕物帳:55 かむろ蛇 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
これは容易ならぬ手剛てごわい相手ですが、運の好いことに、砧の弟某は左京の組下で、いろいろのことで恩を着せております。
マイルを隔てた森林の中に土人の部落があるということと、今その部落は合戦最中で敵の軍中には白人がいるので手剛てごわいなどということであった。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
私より半年早くから区域に馴染んでいて手剛てごわい相手であった。私はこの男が配達している間、終始押され気味であった。
安い頭 (新字新仮名) / 小山清(著)
その態度には、なんだかねこのような、陰性の敵意が含まれていた。横沢氏よりも、こっちが手剛てごわい。そんな気がした。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
まず江戸市中に入り込む志士或いは浮浪の徒を捕縛し、手剛てごわいのは暗殺する、これが「新徴組」の役目であります。
「はあ、もう一戦、やってみます。が、なにしろ、敵は何国の軍隊ともしれず、それに中々手剛てごわいのであります」
二、〇〇〇年戦争 (新字新仮名) / 海野十三(著)
陛下が御若い時英気にまかせやたらに臣下を投げ飛ばしたり遊ばすのをうれえて、ある時イヤというほど陛下を投げつけ手剛てごわい意見を申上げたこともあった。
謀叛論(草稿) (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
むろん手剛てごわい相手は一人も居なかったが、新顔の私がまじっているので皆スバラシク気が乗っていた。
幽霊と推進機 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「何しろね、対手は手剛てごわいから気をつけなければならないよ。根岸でさえ手を焼いているのだから」
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
それでもなお、人の言うごとく、各人が平和に仕事し得るくらいには十分世界は広いし、また各人はすでに自分の才能のうちにかなり手剛てごわい敵をもってるものである。
序でに鳥渡ちょっと言っておくが、彼は、柔よく剛を制すという戦術タクチックを殆んど盲目的に信じていて、嫌疑者や犯人が手剛てごわい人間であればある程ますますおとなしい調子で話しかけるのが習慣であった。
犠牲者 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
梓山の安十郎はたしかに切明けが通っているとは言うたものの、見た所は如何にも手剛てごわそうなので、おおいに尻込みの体であったが、中村君も同行するというので、南日君と三人で思い切って通って見ると
秩父の奥山 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
彼の同僚は、彼の威勢にあっせられて唯々いいたり、彼の下僚は、彼の意を迎合して倉皇そうこうたり、天下の民心は、彼が手剛てごわき仕打に聳動しょうどうせられて愕然がくぜんたり。彼は騎虎きこの勢に乗じて、印幡沼いんばぬま開鑿かいさくに着手せり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
相手の手剛てごわさをさとった時、津田は偶然好いうそを思いついた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それがひどく手剛てごわく感じられた。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
竜泉寺町のN新聞は商売敵としては手剛てごわい相手であった。読者数は私たちの方が倍からあったが、区域の広さなどを考慮すると、相当食い込まれていた。
安い頭 (新字新仮名) / 小山清(著)
ひどく快活で、そうしてちょっと男の子みたいな手剛てごわさが、ここの看護婦さんたちに通有の気風らしい。
パンドラの匣 (新字新仮名) / 太宰治(著)
例の手剛てごわい相手どもが如何に物を考えてやっているかという一つの材料になると思うよ。しかも僕としては、いまだかつて、これほど頭をひねった事件はなかったのだ。
暗号数字 (新字新仮名) / 海野十三(著)
山崎の名をかたって来たように、ワザと盲目の真似をして来た者、手剛てごわい敵、手が出せぬ。それで、一同も眼を白黒としていると、蒼くなり赤くなっている擬いの神尾主膳
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「こいつ、思ったより手剛てごわいぞ?」ホートンはひそかに思い乍ら、何気なく第二の質問を出した。
喇嘛の行衛 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「お前は離屋の入口に頑張っていて、一番先に飛出した人間を縛るのだ、少し手剛てごわいぞ」
銭形平次捕物控:282 密室 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
しかし一方に伯爵未亡人が案外に手剛てごわいらしいのにも驚いた。
けむりを吐かぬ煙突 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
内にいると、そのおかみさんとめしたき女にいじめられるし、たまたま休みの日など外へ遊びに出ても、外にはまた、別種の手剛てごわい意地悪の夜叉やしゃがいるのでございました。
男女同権 (新字新仮名) / 太宰治(著)
あくまで手剛てごわいので、役人は下役を呼んで持って来さしたのが、例の捨てて逃げた刀である。
一人占めにする手段も知って居るが、向うに廻る人間が恐ろしく手剛てごわい、貝六風情に七万両山分けでは少し甘過ぎるが、猫の子の手でも助太刀に欲しい時だ、どうだい俺の仲間になって、大山を
大江戸黄金狂 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
相当手剛てごわい女と思った方が間違いないだろう。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「どうもソノ、あの場合ぐずぐずしていると、こっちの部下たちが、みんな海の中に、なげこまれそうになったもんでしてナ。なにしろ多勢たぜい無勢ぶぜいというやつです。そのうえ、向こうは、なかなか手剛てごわいごろつきぞろいなんです」
火薬船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
むだな事だ、にくい邪魔、突き刺して絹を取り上げ、家へ帰ってお母さんに、きょうは手剛てごわい旅人にい、可哀想かわいそうに妹は殺されましたと申し上げれば、それですむ事、そうだ
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「裏にいるよ。手剛てごわいから、怪我をしないように気をつけろ」
手剛てごわいノルマン
火薬船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
なつかしいどころか、私にはどの先生よりも手剛てごわいお方のように見受けられた。
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「八、下っ引を二三人呼んで来い、相手はうんと手剛てごわいぞ」
実に、手剛てごわい。僕たちの悪計もまさに水泡すいほうするかのごとくに見えた。
未帰還の友に (新字新仮名) / 太宰治(著)
平次は、相手が手剛てごわいと見て、峻烈に突っ込みました。