たわぶ)” の例文
旧字:
お勢がまず起上たちあがッて坐舗ざしきを出て、縁側でお鍋にたわぶれて高笑をしたかと思う間も無く、たちまち部屋の方で低声ていせいに詩吟をする声が聞えた。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
また或日あるひ食事の時に私が何か話のついでに、全体今の幕府の気が知れない、攘夷鎖港とは何の趣意しゅいだ、これめに品川の台場の増築とは何のたわぶれだ
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
蝦蟇法師がまほうしがお通に意あるが如き素振そぶりを認めたる連中は、これをお通が召使の老媼おうなに語りて、且つたわぶれ、且つ戒めぬ。
妖僧記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
其の絵のたへなるをでて乞要こひもとむるもの一二前後ついでをあらそへば、只花鳥山水はふにまかせてあたへ、鯉魚りぎよの絵は一三あながちに惜しみて、人ごとたわぶれていふ。
彼方あなたの山をきっにらめつ、「さては今宵彼の洞にて、金眸はじめ配下の獣酒宴さかもりなしてたわぶれゐるとや。時節到来今宵こそ。宿願成就する時なれ。阿那あな喜ばしやうれしや」
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
善吉はうがいをしながらうなずく。初緑らの一群は声高にたわぶれながらッてしまッた。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
たわぶれながらステイションに近づけば。発車のしらせチリリンチリリン。
藪の鶯 (新字新仮名) / 三宅花圃(著)
前言ぜんげん前行ぜんこうただたわぶれのみと、双方打解けて波風なみかぜなく治まりのついたのは誠に目出度めでたい、何もとがめ立てするにも及ばぬようだが、私には少し説がある。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
下女とたわぶれて笑い興じている所へ行きがかりでもすれば、文三を顧みて快気こころよげに笑う事さえ有る。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
さればよ殿との聞き給へ。わらわが名は阿駒おこまと呼びて、この天井に棲む鼠にてはべり。またこの猫は烏円うばたまとて、このあたりに棲む無頼猫どらねこなるが。かねてより妾に懸想けそうし、道ならぬたわぶれなせど。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
私はかねて申す通り一体の性質が花柳かりゅうたわぶれるなどゝ云うことは仮初かりそめにも身に犯した事のないのみならず、口でもそんな如何いかがわしい話をした事もない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
誰彼の見さかいなくたわぶれかかッて、詩吟するやら、唱歌するやら、いやがる下女をとらえて舞踏の真似をするやら、飛だり、跳ねたり、高笑をしたり、さまざまに騒ぎ散らす。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)