おのゝ)” の例文
旧字:
けだし桔梗の方としては、父の恨みを報いた以上夫に何の含むところもあるべき等がなく、今は却って己れの犯した恐ろしい罪業におのゝいていたであろうから
彼女は室内に這入ると、そのまゝベタンと板の間の上へ坐って頭も得上えあげず、作りつけた人形のようにじっとしていた。後れ毛が白い頸の上で微におのゝいていた。
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
おのゝに、をんなむね確乎しつかせば、ふくらかなゑりのあたりも、てのひらかたつめたいのであつた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
満廷の朝臣たちがおのゝき恐れ、或は板敷の下にい入り、或は唐櫃からびつの底に隠れ、或は畳をかついで泣き、或は普門品ふもんぼんしなどする中で、時平がひとり毅然きぜんとして剣を抜き放ち
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「わつ、」といて、雪枝ゆきえ横様よこざますがりついた、むね突伏つゝふせて、たゞおのゝく……
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ぶうッ、ぶうッ、ぶうッ、物凄い鼻息をっかけて、傲然と出発の用意を整えて居る車台を見ると私の神経は、アルコールの酔を滅茶々々に蹈みにじり、針のような鋭敏な頭を擡げて顫えおのゝき出した。
恐怖 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
もがくかみづれるか、わな/\と姿すがたおのゝく——天守てんしゆかげ天井てんじやうから真黒まつくろしづくちて、手足てあしかゝつて、のまゝかみつたふやうに、ながつて、したへぽた/\とちて、ずらりとびて
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)