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惰気
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だき
ふりがな文庫
“
惰気
(
だき
)” の例文
武蔵は今、ひたと、身を寄せて
屈
(
かが
)
みこんでいたが、その一瞬に、彼のこの日頃の
惰気
(
だき
)
も迷いも、毛穴からサッと吹き消されていた。
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼
(
かれ
)
は大いに疲労して、
白昼
(
はくちう
)
の凡てに、
惰気
(
だき
)
を催うすにも拘はらず、知られざる
何物
(
なにもの
)
かの興奮の
為
(
ため
)
に、静かな
夜
(
よ
)
を
恣
(
ほしいまゝ
)
にする事が出来ない事がよくあつた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
追々
惰気
(
だき
)
を催して来、しかも思い切って心を許し、眠に入ることが出来なかったので、身心次第に
疲労
(
つか
)
れ
衰弱
(
おとろ
)
えて、戦意
頓
(
とみ
)
に失われ、退陣したいものと思うようになった。
赤坂城の謀略
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
冷水によって眠気と
惰気
(
だき
)
とをはらい、さわやかな朝日をおがんで清新な英気を受ける。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
殊
(
こと
)
に、余り客の立て
混
(
こ
)
んでいない
昼湯
(
ひるゆ
)
の、あの
長閑
(
のどか
)
な
雰囲気
(
ふんいき
)
は、彼の
様
(
よう
)
に
所在
(
しょざい
)
のない人間が、
贅沢
(
ぜいたく
)
な
眠
(
ねむり
)
から
醒
(
さ
)
めたのちの体の
惰気
(
だき
)
を、そのまま運んでゆくのに最も適した場所であった。
電気風呂の怪死事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
▼ もっと見る
さしもの広い部屋も、この中の
惰気
(
だき
)
も、また自我も争気も、しばらくは一掃されて、彼ひとりの声しかそこには聞えなかった。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
稲葉山城の白壁にも、
日永
(
ひなが
)
の陽があたっている。
惰気
(
だき
)
と
倦怠
(
けんたい
)
の
陽炎
(
かげろう
)
が、そこの白壁にも見てとれる。そんな日に、絶頂の
山城
(
やまじろ
)
を
麓
(
ふもと
)
から仰ぐと
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この頃、寄手のていをうかがってみますと、蜀兵も、この涪城を出ぬお味方に攻めあぐね、みな長陣に倦み飽いて、
惰気
(
だき
)
満々のていたらくです。
三国志:09 図南の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いつでも出勢できるように、馬寄せ場から兵営全部が、ひたすら勢揃いの日を待機しており、いまはいささか待ちしびれの
惰気
(
だき
)
すら生じそうだった。
私本太平記:11 筑紫帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
……だから、このところ、目に立って、武者所も、
惰気
(
だき
)
にみちています。やはり父上が、御出仕なくば、だめでしょう
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「僕に
従
(
つ
)
いて来たまえ。京都は今、旋風の中心だ、江戸のような
惰気
(
だき
)
や、
自暴
(
やけ
)
はない。もりあがる力が大地にも感じるぞ。君の考え方もきっと変わる」
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
同志の間には、少しも
聯絡
(
れんらく
)
がとれていない。何か、ちりぢりばらばらな
惰気
(
だき
)
が感じられて、惣右衛門は
憤々
(
むかむか
)
した。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この頃から伊丹城中には、
惰気
(
だき
)
ようやく満ち、士気また
紊
(
みだ
)
れ始めたかと見らるる
徴候
(
ちょうこう
)
があらわれ出して来た。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
俄然、仕事場の空気は、きのうまでの
惰気
(
だき
)
を一掃して、戦場のような眼つきと、汗の殺気がみなぎった。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いや、午まえよりも、秩序がみだれ、
惰気
(
だき
)
が
漂
(
ただよ
)
って、山淵右近が奉行していた昨日と、変りがなかった。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「春も終りだから、散った
花屑
(
はなくず
)
やら人間の
惰気
(
だき
)
を、ひと雨ドッと、洗いながすもよかろう」
宮本武蔵:02 地の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この
惰気
(
だき
)
からわく霧のような心中の敵は、ともすれば不平をささやき
怯
(
ひる
)
みを誘い、仲間同士のあらを挙げては不和を
醸
(
かも
)
し、また、郷愁を覚えさすなど——あらゆる煩悩の弱点を
衝
(
つ
)
いて
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
だが、槍を持ったなと思う瞬間、微笑ましい光景などは消し飛んで、兄弟の掛り合う
烈
(
はげ
)
しい気声は、朝から続いて
惰気
(
だき
)
満々
(
まんまん
)
だった
大人
(
おとな
)
どもの試合のどれよりも真剣で凄まじくさえあった。
剣の四君子:04 高橋泥舟
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この日頃からの
惰気
(
だき
)
、
倦怠
(
けんたい
)
、孤愁などはみな汗となって流れるかのようだ。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
夜来
(
やらい
)
の
惰気
(
だき
)
と
昏迷
(
こんめい
)
を、むうっとするばかり
澱
(
よど
)
ませている。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
蜀陣の
旌旗
(
せいき
)
は依然、
粛
(
しゅく
)
として
寸毫
(
すんごう
)
の
惰気
(
だき
)
も見えませぬ。
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“惰気”の意味
《名詞》
怠惰な気分、心情。
(出典:Wiktionary)
惰
常用漢字
中学
部首:⼼
12画
気
常用漢字
小1
部首:⽓
6画
“惰”で始まる語句
惰
惰弱
惰眠
惰力
惰性
惰勢
惰民
惰夫
惰鴉
惰者