御姿おんすがた)” の例文
頼春は忽然数年前に、日野資朝すけとも卿の別館の夜の後苑でその御方おんかたの、御姿おんすがた御声おんこえとに接しまつった事を、まざまざと脳裡に映し出した。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
これが示さるゝ間、心の中にていはむ、わが主ゼス・クリスト眞神まことのかみよ、さてはかゝる御姿おんすがたにてましましゝかと 一〇六—一〇八
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
昔より信仰厚き人達は、うつつ神仏かみほとけ御姿おんすがたをもをがみ候やうに申候へば、私とても此の一念の力ならば、決してかなはぬ願にも無御座ござなく存参ぞんじまゐらせ候。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
惜哉おしいかな障子越しで玉の御姿おんすがたを拝する事が出来ない。従って顔の真中に大きな鼻を祭り込んでいるか、どうだか受合えない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ぬしもおわさばきこし召せ、かくの通りの青道心。何を頼みに得脱成仏とくだつじょうぶつ回向えこういたそう。何を力に、退散の呪詛じゅそを申そう。御姿おんすがたを見せたまわばひとえに礼拝をつかまつる。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
吉助「われら夢に見奉るえす・きりすと様は、紫の大振袖おおふりそでを召させ給うた、美しい若衆わかしゅ御姿おんすがたでござる。まったさんた・まりや姫は、金糸銀糸のぬいをされた、かいどり御姿おんすがたおがみ申す。」
じゅりあの・吉助 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そのときたちまち、右手みぎてたかく、御秘蔵ごひぞう御神剣ごしんけんかざし、うるし黒髪くろかみかぜなびかせながら、部下ぶか軍兵つわものどもよりも十さきんじて、草原くさはら内部なかからってでられたみことたけ御姿おんすがた、あのときばかりは
自分は独り居残って、昨夜ゆうべの夢の御姿おんすがた
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
唯其折ただそのをりの形見には、涙のひまに拝しまゐらせ候御姿おんすがたのみ、今に目に附き候て旦暮あけくれわすれやらず、あらぬ人の顔までも御前様おんまへさまのやうに見え候て、此頃は心も空に泣暮し居りまゐらせ候。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
梨本御門跡なしのもとごもんぜき様が従者ずさに囲まれ、歩を運ばれる御姿おんすがたであった。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
世にも気高い御姿おんすがた、乞食の王の御姿。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
田鶴見様方たずみさまかたにて御姿おんすがたを拝し候後さふらふのちはじめ御噂承おんうはさうけたまはり、私は幾日いくかも幾日も泣暮し申候。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)