張詰はりつ)” の例文
うだ、んだとへば、生死いきしにわからなかつた、おまへ無事ぶじかほうれしさに、張詰はりつめたゆるんで落胆がつかりして、それきりつたんだ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
捕えたらあゝも云おう、うも云おうと意気んでいた泉原は、張詰はりつめた気がゆるむと、一時につかれを感じてきた。
緑衣の女 (新字新仮名) / 松本泰(著)
三文字紋弥の声につれて、覚束おぼつかない足取で、現われた十八九の娘が一人、殿の御前へ来ると、張詰はりつめた気もくだけたものか、ヘタヘタと坐ってヒョイとお辞儀をしました。
二十けんにもあま巨大きよだい建物たてものは、るから毒々どく/\しい栗色くりいろのペンキでられ、まどは岩たたみ鐵格子てつがうしそれでもまぬとえて、内側うちがはにはほそい、これ鐵製てつせいあみ張詰はりつめてある。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
さあうなると今迄いまゝで張詰はりつめてつた幾分いくぶんゆるんでて、疲勞つかれうえかんじてる。
予をしてあやまたざらしめば、首尾好くがんの満ちたるより、二十日以来張詰はりつめし気の一時にゆるみたるにやあらん。
黒壁 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
とててきがたしと、断念をするとともに、張詰はりつめた気もゆるみ、心もくじけて、一斉いっときにがつくりと疲労つかれが出た。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)