いしゆみ)” の例文
馬に乗った者もあれば徒歩でいる者もあって、それがほこを持ちいしゆみを持っていた。馬のいななく声と人声が家の周囲に湧きたって聞えた。
胡氏 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
不日、青龍の牙旗をひるがえした船を見たまわば、即ち、われら降参の船なりとご覧ぜられ、水寨すいさいいしゆみを乱射するを止めたまわんことを。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かくて左にむかひて我等遠くすゝみゆきいしゆみとゞくあひをへだてゝまたひとりいよ/\猛くかつ大いなる者をみき 八二—八四
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
いしゆみに発すべき機がある故に、射る者これを発すれば直ちにが動く。未だ発現しないで可能性としてかすかに存するすがたが微であり、機である。
親鸞 (新字新仮名) / 三木清(著)
秦の昭襄王しょうじょうおうの時白虎害を為せしかば能く殺す者を募る、夷人胊䏰くじん廖仲薬りょうちゅうやく秦精しんせいいしゆみを高楼に伏せて射殺す、王曰く虎四郡をすべて千二百人を害せり
彼らの主戦武器たるいしゆみは射勢はかなりに激しかつたが射程がない。城壁をかこんだ日本軍が鉄砲を射つ。百雷の音。怪煙万丈の間から味方がバタ/\倒れて行く。
鉄砲 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
槍の中心なかごに、紐をつけて射込んだのですよ、昔々、石弓(いしゆみ)といふものを戰の時使つたといふが、板に弓を留めて射ると、かなりの重いものでも、狙ひ違はず遠くへ射込める
銭形平次捕物控:282 密室 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
川上を見ると、獅子飛ししとび、米漉こめかしなど云う難所にいじめられて来た宇治川は、今山開けさわるものなき所に流れ出て、いしゆみをはなれたの勢を以て、川幅一ぱいの勾配こうばいある水を傾けて流して来る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
老婆は、一目下人を見ると、まるでいしゆみにでもはじかれたように、飛び上った。
羅生門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そして自分の開いてるひざに、あるいは隣りの者の膝の上に、両の手を置いて、飽かずに口をききながら、いしゆみのような強さで子音を空中にころがしていた。時々大笑いをしては、全身を揺ぶった。
兵隊はスペイン兵四百、土人兵二百であるが、スペイン兵のうちで小銃狙撃兵は僅かに十三人、いしゆみ狙撃兵さえも三十二人に過ぎなかった。ほかに騎兵十六人、重青銅砲十門、軽蛇砲(長砲)四門。
鎖国:日本の悲劇 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
(1) アマツポ(いしゆみ)すなわち「仕掛け弓」を仕掛ける事。
アイヌ神謡集 (新字新仮名) / 作者不詳(著)
だから俺はいしゆみがうまいぞ
浪曼的月評 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
たとへばいしゆみを放つとき、これをくことつよきに過ぐれば、つる切れ弓折れて、矢の的に中る力のるごとく 一六—一八
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
敵はまださとらず——と思ったか全軍を分散して、城の東西南北に分ち始めた。と思うまに城の上から数千のいしゆみがいちどにつるを切って乱箭らんせんを浴びせてきた。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
老婆は、一目下人を見ると、まるでいしゆみにでも弾かれたやうに、飛び上つた。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
石弓(いしゆみ)というものをいくさのとき使ったというが、板に弓を留めて射ると、かなりの重いものでも、狙いたがわず遠くへ射込める、ひさしにそれを仕掛けて石の代りに槍の中心をつがえ、着換をして
銭形平次捕物控:282 密室 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
人間がいしゆみを仕掛けて置いてあるとその弩を兄様が
アイヌ神謡集 (新字新仮名) / 作者不詳(著)
いしゆみ征矢そやが、魏兵の上へいちどに降りそそいできた。城門は八文字にひらかれ、朱桓は単騎乱れる敵の中へ入って、魏将の常雕を、ただ一太刀に斬って落とした。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「さきにも云った通り、汝はとりで狭間はざま狭間にいしゆみを張り、敵が迫るまで、みだりに動くな」
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その大船のには、「すい」の字を大きく書いた旗を立て、いしゆみ千張と黄鉞こうえつ銀鎗ぎんそうを舷側にたてならべ、彼は将台に坐し、水陸の諸大将すべて一船に集まって、さかんなる江上の宴を催した。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おのれっ」と、いしゆみを張って、周泰の舟へ近づきながら、雨あられと矢を向けてきた。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
城壁の上には無数のいしゆみを据えている。それは一に十せんを射ることができ、やじりには毒が塗ってあるので、これにあたると、負傷ということはない。みな皮肉ただれ五臓を露出して死ぬのである。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いなごの飛ぶような唸りは百ちょういしゆみつるを切って放ったのであった。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)