幸福しやわせ)” の例文
「橋本先生も云うて御座ったけんどなあ。お父さんもモウこのまま死んでしまわっしゃった方が幸福しやわせかも知れんち云うてなあ……」
木魂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
自分はこの流れの両側に散点する農家の者を幸福しやわせの人々と思った。むろん、この堤の上を麦藁帽子むぎわらぼうしとステッキ一本で散歩する自分たちをも。
武蔵野 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
れはきみ幸福しやわせなれかし、すこやかなれかしといのりて此長このながをばつくさんには隨分ずいぶんとも親孝行おやこう/\にてあられよ
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
持って、幸福しやわせやわ。女から、はなも引っかけられんような男が、どうなるものですか。……ウフフ、兄さんたら、自分が女から惚れられたことないもんで、自分が焼き餅焼いとるのね。きっと、そうよ
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
幸福しやわせならぬことおのづから其中そのうちにもあり、おさくといふむすめ桂次けいじよりは六つの年少とししたにて十七ばかりになる無地むぢ田舍娘いなかものをば、うでもつまにもたねばおさまらず
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「ね、先生。六は死んだほうが幸福しやわせでございますよ、」と言って涙をハラハラとこぼしました。
春の鳥 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
幸福しやわせならぬ事おのづからそのうちにもあり、おさくといふ娘の桂次よりは六つの年少とししたにて十七ばかりになる無地の田舎娘いなかものをば、どうでも妻にもたねば納まらず
ゆく雲 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
と言って少し考えて「けれどもね、お前は死んだほうがいいよ。死んだほうが幸福しやわせだよ……」
春の鳥 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
こゝで我れが幸福しやわせといふを考へれば、歸國するに先だちてお作が頓死するといふ樣なことにならば、一人娘のことゆゑ父親てゝおやおどろいて暫時は家督沙汰やめになるべく
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
哀れな母親は、その子の死を、かえって子のために幸福しやわせだと言いながらも泣いていました。
春の鳥 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
ここで我れが幸福しやわせといふを考へれば、帰国するに先だちておさく頓死とんしするといふ様なことにならば、一人娘のことゆゑ父親てておやおどろいて暫時しばしは家督沙汰ざたやめになるべく
ゆく雲 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
君はおのづから君の本地ほんちありてその島田をば丸曲まるまげにゆひかへる折のきたるべく、うつくしき乳房を可愛かわゆき人に含まする時もあるべし、我れは唯だ君の身の幸福しやわせなれかし
ゆく雲 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
なんといふお幸福しやわせやきもちやいてうらやみますぞや、そのおひとてられたらおまへさままあなんあそばす、おきなさるはおはらがたつか、おおこりになつてもよし、たみは申だけは申ます
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そのあかつきなにかいさゝか仕損しそこなゐでもこしらゆればれは首尾しゆびよく離縁りえんになりて、一ぽんだち野中のなかすぎともならば、れよりは自由じゆうにて其時そのとき幸福しやわせといふことばあたたまへとわらふに
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
目鼻だちの何處やらが水子みづこにて亡せたる總領によく似たりとて、今はなき人なる地主の内儀つまに可愛がられ、はじめはお大盡の旦那と尊びし人を、父上と呼ぶやうに成りしは其身の幸福しやわせなれども
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)