小狗こいぬ)” の例文
周防すおうにはまたトトコグサ、その他これに近い語がわずかずつの変化をもって行われ、そのトトコ等は、すべて皆小狗こいぬのことである。
犬嫌いぬぎらいの父は泊めた其夜そのよ啼明なきあかされると、うんざりして了って、翌日あくるひは是非逐出おいだすと言出したから、私は小狗こいぬを抱いて逃廻って、如何どうしても放さなかった。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
おりからイエスは食事をしておられたのでしょう、女に向かって「子供のパンを取りて小狗こいぬに投げ与うるは善からず」と軽くお答えになりました(七の二七)。
が、似た事のありますものです——その時は小狗こいぬでした。鈴がついておりましたっけ。白垢むく真白まっしろなのが、ころころと仰向あおむけに手をじゃれながら足許あしもとを転がってきます。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すると、あんたは『これでいゝの』と言って粥の道具をおきみに返すと『ご馳走さま』と言って、そのまゝ道端に捨てられた小狗こいぬのように、床にごろりと寝た。すぐ、すや/\と寝息の音を立てた。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
力なげ首悄然しを/\と己れが膝に気勢いきほひのなきたさうなる眼を注ぎ居るに引き替へ、源太郎は小狗こいぬ瞰下みおろ猛鷲あらわしの風に臨んで千尺の巌の上に立つ風情、腹に十分の強みを抱きて、背をも屈げねば肩をも歪めず
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
呉俊陞氏はせた小狗こいぬいたはるやうに赤塚氏の肩へ手をかけた。
父は困った顔をしていたが、併し其も一の事で、其中そのうち小狗こいぬ独寝ひとりねに慣れて、夜も啼かなくなる。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
……これを見ると、うらやましいか、おけの蔭から、むくと起きて、脚をひろげて、もう一匹よちよちと、同じような小狗こいぬは出て来ても、村の閑寂間しじまか、棒切ぼうきれ持った小児こどもも居ない。
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
越後の中部ではこの日の行事に、米の粉を練って小狗こいぬの形をこしらえて戸のさんに飾り、または十二支の形を作り鴨居かもい長押なげしに引掛ける習わしがあり、犬の子正月の名はこれに基づいている。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
力なげ首悄然しおしおおのれがひざ気勢いきおいのなきたそうなる眼をそそぎ居るに引き替え、源太郎は小狗こいぬ瞰下みおろ猛鷲あらわしの風に臨んで千尺のいわおの上に立つ風情、腹に十分じゅうぶの強みを抱きて、背をもげねば肩をもゆがめず
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
秋の日、小狗こいぬかくれきて
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
早速履脱くつぬぎへ引入れて之を当がうと、小狗こいぬ一寸ちょっとを嗅いで、直ぐうまそうに先ずピチャピチャと舐出なめだしたが、汁が鼻孔はなへ入ると見えて、時々クシンクシンと小さなくしゃみをする。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
見事に小狗こいぬふみつけた。小村さんは狼狽うろたえながら、穴をのぞくように土間を透かして
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)