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ひそひそ
ふりがな文庫
“
密々
(
ひそひそ
)” の例文
今朝出社した時、此二人が何か
密々
(
ひそひそ
)
話合つて居て、自分が入ると急に止めた。——それが少なからず
渠
(
かれ
)
の心を悩ませて居たのだ。
病院の窓
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
密々
(
ひそひそ
)
とささやき合っている話の方に、多分な心をつかっていることは、少し
緻密
(
ちみつ
)
な眼でこの一組を注意していれば分りましょう。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
亜
(
つ
)
いで男の声は
為
(
せ
)
ざりしが、
間有
(
しばしあ
)
りて
孰
(
いづれ
)
より語り出でしとも分かず、又
一時
(
ひとしきり
)
密々
(
ひそひそ
)
と話声の
洩
(
も
)
れけれど、調子の低かりければ
此方
(
こなた
)
には聞知られざりき。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
多人数一室へ
閉籠
(
とじこも
)
って、徹夜で、
密々
(
ひそひそ
)
と話をするのが、
寂
(
しん
)
とした
人通
(
ひとどおり
)
の無い、
樹林
(
きばやし
)
の中じゃ、その
筈
(
はず
)
でしょう。
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「あゝ、そうですか。じゃ一寸お待ちなさい!」と、次の間に入って行ったが、また出て来て、「宮ちゃん、
其方
(
そっち
)
の戸外の方から行きますから。」と、
密々
(
ひそひそ
)
と言う。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
▼ もっと見る
密々
(
ひそひそ
)
と話しつつ来る二人の人の声が聞こえる、清いのが秀子の声で濁ったのが虎井夫人の声だ。
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
平次も妙にギョッとした心持で立ち
竦
(
すく
)
みました。若い男と女が、納戸の後ろで、何やら
密々
(
ひそひそ
)
と語り合っているではありませんか。しかも、二人とも、涙を流しているのです。
銭形平次捕物控:321 橋場の人魚
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
いつも元気な父が其時ばかりは困った顔をして何か
密々
(
ひそひそ
)
言っているのを、子供心にも不審に思った事があったが、それが伯父の謂うお
祖母
(
ばあ
)
さんに泣かされていたのだったかも知れぬ。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
葉子は、ふと気がついたように、
四囲
(
あた
)
りを見廻してみると鼻血を出した為か、もう黒吉の姿はなく、他の少年座員達が何か
密々
(
ひそひそ
)
と囁き合いながら、銘々に稽古を始めるところだった。
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
口笛が止むとあやなす声が、こう
密々
(
ひそひそ
)
と聞こえてきた。フッと蝋燭の火が消えた。しばらく
森然
(
しん
)
と静かであった。と、暗い舞台の上へ蒼白い月光が流れ込んで来た。誰か表戸をあけたらしい。
大捕物仙人壺
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
二人は、裏畑の中の材木小屋に入つて、積み重ねた角材に
凭
(
もた
)
れ乍ら、雨に湿つた新しい木の香を嗅いで、小一時間許りも
密々
(
ひそひそ
)
語つてゐた。
天鵞絨
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
若い者の庄吉は、主人の三右衛門と何か
密々
(
ひそひそ
)
と話し込んでいたが、翌朝になると、向う鉢巻をした十人ばかりの男達と一緒に
下頭橋由来
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その二人、もう一人のが明座ッてやっぱり婦人で、今のを聞くと、二言ばかり、二人で
密々
(
ひそひそ
)
と言ったが否や、手を
引張合
(
ひっぱりあ
)
った様子で、……もっとも暗くってよくは分らないが。
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
長三は塔の底に宝が有るなどと昔は信じませんでしたが、夫人の言葉で信ずる事に成りました、それは此の頃彼と、虎井夫人とが折々
密々
(
ひそひそ
)
話などして居た様子で私が見て取りました
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
しきりと、自分のすがたへ眼をそそぎ、指さし合って、
密々
(
ひそひそ
)
いう辺りの声に、吉次も気がついたか、急に間がわるそうにして
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
先に立つた
女児等
(
こどもら
)
の心々は、まだ何か
恐怖
(
おそれ
)
に囚はれてゐて、手に手に小い螢籠を携へて、
密々
(
ひそひそ
)
と露を踏んでゆく。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
密々
(
ひそひそ
)
、話していやはったな。……そこへ、私が
行合
(
ゆきあ
)
わせたも、この杯の
瑞祥
(
ずいしょう
)
だすぜ。
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
『そう云われて思い出した。——夢かと思っていたが、じゃあ今ここで、
密々
(
ひそひそ
)
云っていた二人の話はあれあほんとの事か』
魚紋
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
密々
(
ひそひそ
)
と話声が起りかけた。健は
背後
(
うしろ
)
の方から一つ咳払ひをした。話声はそれで
再
(
また
)
鎮つた。
足跡
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
そして、裏の
納屋
(
なや
)
で、長いこと母と
密々
(
ひそひそ
)
話した
揚句
(
あげく
)
、彼の母は涙ながら、真雄の所へ来て、その気持を訴えたが
山浦清麿
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
私の前に坐つて居る市子の方を
顋
(
あご
)
で指し乍ら、何か
密々
(
ひそひそ
)
話し合つて笑つた事、菊池君が盃を持つて立つて来て、西山から声をかけられた時、怎やら私達の所に座りたさうに見えた事
菊池君
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
先頭の二人が振る合図に従って、ふたたび
密々
(
ひそひそ
)
と駒を進めた。月も雲も真夜中の中天に寝まろんでいる
相
(
そう
)
である。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
左
(
さ
)
う
右
(
か
)
うしてるうちに、一人二人と他の水汲が集つて来たので、二人はまだ何か
密々
(
ひそひそ
)
語り合つてゐたが、
軈
(
やが
)
て
満々
(
なみなみ
)
と水を汲んで担ぎ上げた。そして、すぐ二三軒先の権作が家へ行つて
天鵞絨
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
などと
密々
(
ひそひそ
)
囁
(
ささや
)
き交わし、
指真似
(
ゆびまね
)
や、眼くばせで、各〻、いつも通りの部署につくべく分れて行く。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
奥州の土産ばなしに、天狗にお目にかかりてえもんだ——と、こないだうちから念願にかけていたら、ほんとに
巡
(
めぐ
)
り会っちまった。しかも天狗が二人して
密々
(
ひそひそ
)
ばなしだ。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
などという声が、今宵にも大事が到来しているように、物々しく、しかし
密々
(
ひそひそ
)
と伝えられていた。
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
病人のそばで、
密々
(
ひそひそ
)
、話し込んでいた
女衒
(
ぜげん
)
の
粂吉
(
くめきち
)
が、耳を抑えて、飛び上がった。
雲霧閻魔帳
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
何か、
密々
(
ひそひそ
)
と云い合うと、その侍へ一礼して、端の方から立ち去ってしまった。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
こう急激に決行へ
焦心
(
あせ
)
って来たこの人々は、もう一日も
猶予
(
ゆうよ
)
はならない気がして、吉良家の屋敷替えという絶好な機会を掴んで、
宿志
(
しゅくし
)
を遂げようとするものらしく、
密々
(
ひそひそ
)
と、それから半刻も
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
密
常用漢字
小6
部首:⼧
11画
々
3画
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密々話