姙娠にんしん)” の例文
女房にようばうあるとし姙娠にんしんして臨月りんげつちかくなつたら、どうしたものか數日すうじつうち腹部ふくぶ膨脹ばうちやうして一うちにもそれがずん/\とえる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
だから姙娠にんしんを止めることが出来ないなら、乳を飲ませることだけでも控えさせた方がよいと、そう云う頭で取り計らいもしたのであった。
猫と庄造と二人のおんな (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そこで父母が姙娠にんしんしたことを怪しんで、その女に、「お前は自然しぜん姙娠にんしんした。夫が無いのにどうして姙娠したのか」
姙娠にんしんとか何とか、まあ、たったそれくらいの事で、革命だの何だのと大騒ぎして、そうして、死ぬなんて、私は夫をつくづく、だめな人だと思いました。
おさん (新字新仮名) / 太宰治(著)
精子と卵子との試験管内における人工交配は、すでにQ国では一般化されてゐるけれど、それでもまだ遊戯的な恋愛の結果たる姙娠にんしん現象は、必ずしも減少してはゐないと言はれる。
わが心の女 (新字旧仮名) / 神西清(著)
よく讀書よみかきつたなからず料理人の女房になしおく勿體もつたい無きなどと見る人ごと言合いひあへる程成ば吉兵衞は一方成ず思ひ偕老同穴かいらうどうけつちぎあさからず暫時しばらく連添つれそふうち姙娠にんしんなし元祿二年四月廿八日たまの如くなる男子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
姙娠にんしんしたと祝はれたかと思ふと、急に死んでしまつた。
「郭子儀」異変 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
一 姙娠にんしん
母となる (新字旧仮名) / 福田英子(著)
この時にその皇后は姙娠にんしんしておいでになり、またお愛し遊ばされていることがもう三年も經つていたので、軍を返して、俄にお攻めになりませんでした。
しな自分じぶん自分じぶんころしたのである。おしなは十九のくれにおつぎをんでからそのつぎとしにもまた姙娠にんしんした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
白昼の太陽が別の世界の太陽でもあるかのやうに実に高い所でくるめいた。暑い瘴気の層を透して人々は昼の星宿の回転する響音を聴いた。そんな真昼どき花子は定に自分の姙娠にんしんを告げた。
水に沈むロメオとユリヤ (新字旧仮名) / 神西清(著)
とむらひ終しとかやこゝ不思議ふしぎなるは先年罪科に所せられたる上臺昌次郎が未だ梅と姦通かんつうせざる以前村中にふかちぎりし娘有りし所遂に姙娠にんしんなしたる儘親元へも掛合かけあひ出生しゆつしやうの子は男女にかゝはらず昌次郎方へ引取約束やくそくなりしが娘は程なく男子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「わたくしは姙娠にんしんしまして、今子を産む時になりました。これは天の神の御子ですから、勝手にお生み申しぐべきではございません。そこでこの事を申し上げます」
身體からだ容子ようすへんつたことを心付こゝろづいたからである。十ねんあまりたなかつたはら與吉よきちとまつてからくせいたものとえてまた姙娠にんしんしたのである。おしな勘次かんじもそれには當惑たうわくした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)