大師だいし)” の例文
夜食後に四角なのを三角に切って、皆で分けて食べましたが、お父様は、「おれは川崎の大師だいしで食べた事があるよ。そこが本家だといっていた。」
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
旧十一月二十三日夜の国巡くにめぐりに、大師だいしさんが石臼の目を切ってあるかれるという伝説が、現在どの範囲にまだ残り伝わっているかということである。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
今は王子権現ごんげんの辺、西新井の大師だいし、川崎大師、雑司ぞうしヶ谷等にもあり、亀戸天満宮かめいどてんまんぐう門前に二軒ほど製作せし家ありしが、震災後これもありやなしや不知しらず
江戸の玩具 (新字旧仮名) / 淡島寒月(著)
場所は——前記のは、桂川かつらがわのぼる、大師だいしの奥の院へ行く本道と、渓流を隔てた、川堤の岐路えだみちだった。
若菜のうち (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こう気づいてからは大師だいしなどはつちかわらのように思われ、心持ちが全然変わった(随聞記第四)。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
何とかして治る工夫はないものかと、大師だいし様に願をかけたり、祖師そし様の御利益にすがったり、方々の温泉をめぐったりしましたが、できものはずんずん大きくなるばかりでした。
肉腫 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
しかし時代の変遷で、その我楽多もだんだんに減って来るので困ります。大師だいし達摩だるま雑司ぞうしすすき木兎みみずく亀戸かめいど浮人形うきにんぎょう、柴又のくくざるのたぐい、みんな私の見逃されないものです。
我楽多玩具 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
いつか大師だいし一同みんなが行く時も、まあ親方の身辺まわりについて居るものを一人ばかり仲間はずれにするでもないと私が親切に誘ってやったに、我は貧乏で行かれないと云ったきりの挨拶あいさつ
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
高僧頭巾こそづきん肩掛かたかけひきまとひ、良人つまきみもろとも川崎かはさき大師だいし參詣さんけいみちすがら停車塲ていしやば群集くんじゆに、あれは新橋しんばしか、何處どこのでらうとさゝやかれて、奧樣おくさまともはれぬるながられをあさからずうれしうて
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
江北橋の北詰には川口と北千住の間を往復する乗合自動車と、また西新井にしあらい大師だいし王子おうじの間を往復する乗合自動車とが互に行きちがっている。六阿弥陀と大師堂へ行く道しるべの古い石が残っている。
放水路 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
大師だいしさんから帰ってまごまごしてると、車屋の親方が来て、お前さんとこの息子は、とんでもねえやつだ、親をてて逃げるなんて、警察へ云ってくがい、俺がいっしょに往いてやろうと云うから
藍瓶 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「おみくじだよ、げん大師だいしの有難い御神籤さ。六十三番のきよう