外記げき)” の例文
柴田外記げきと古内志摩はまだみえないそうで、小関は世評どおり「安芸と甲斐が不和」であると信じたのだろう、べつの座敷へ案内した。
多湖たご外記げきは、亀井能登守の江戸家老だった。べっこうぶちの大眼鏡を額へ押し上げて、微笑の漂っている視線を、岡部辰馬のうえに据えた。
元禄十三年 (新字新仮名) / 林不忘(著)
石母田外記げきは、これで十分、自分の気持を説明したつもりらしいが、武蔵にとっては、少しも説明されたことにはならない。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
和流砲術の大家、井上外記げき正継まさつぐ、稲富喜太夫直賢なおかた田付たつけ四郎兵衛景利かげとしの三人がかなえのかたちになって床几しょうぎに掛け、右往左往する組下の働きぶりを監察していた。
ひどい煙 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
掛て引すゑ九郎兵衞夫婦村役人周藏喜平次木祖兵衞三五郎下伊呂村名主藤兵衞組頭惣體そうたい引合人殘らず罷り出村役人よりさんぬる廿四日節儀せつぎ逐電ちくてんいたせし旨屆け出一同外記げきが出席を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
其時将軍の扈従こじゅうの臣の内藤外記げきが支え立てして、御主人おんあるじ役に一応御試み候え、と云った。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
その上禁制の切支丹きりしたんの伝書や、異国交易の文書があったので、領地を召上げ、財貨を官没し、長男藤十郎以下、外記げき権之助ごんのすけ雲十郎うんじゅうろう等七人の子女は、一人残らず斬られたり流されたり
大江戸黄金狂 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
小河縫殿助ぬひのすけ、小河織部、久野四兵衞、小河專太夫、畝町には井上監物けんもつ、吉田壹岐いき、伊丹藏人くらんど、高橋忠左衞門、小河長五郎、金出口には野村右京、加藤圖書づしよ、村田出羽、毛利又右衞門、久野外記げき
栗山大膳 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
「手長外記げき、益送(役送に同じ)ふひと。」など見え、大諸礼には
手長と足長:土蜘蛛研究 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
名は用九、字は士乾、通称を外記げきという。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
故新左衛門の養嗣子しし采女うねめは、まだ柴田外記げきに預けられて登米とめ郡にいた。そして明くる年の七月に、そこで病死したのだ、と甲斐は思った。
等々の殿上てんじょうから、外記げき、史官、医家、僧門、諸大夫の女房らにいたるまでの総移動も同時となったものだった。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
不埓ふらちすぢも之なきによりかまひなしと申渡せば皆々みな/\ハツと平伏なし一けん引合ひきあひの者共は退きけり此時家老外記げき不審ふしんすくなからず思へども證據も之なき事故しひてもろんがたく其せき
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
安西了益あんざいれうえき。父を外記げきと云ふ。豊前の人である。曰中野貞純ていじゆん。父養庵は井上筑後守正滝まさたきの医官である。井上は下総国高岡の城主である。門人録に純を「順」に作つてあるが、蘭軒は純と書してゐる。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
……やがて書き終った手紙をくるくると巻いて封をし、こちらへ向き直った惣兵衛は、「花蔵院の外記げき殿の屋敷を知っているか」とたずねた。
晩秋 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
むむ、雑訴決断所なら郁芳門いくほうもんのそばではないか。あそこへ行ってみよう。あそこの外記げき蔵人くろうどでもつかまえて、論功ノひょう内見ないけんさせろといったら、見せぬともこばめまい。
遂られよと申送りしかば松本まつもと理左衞門も餘儀よぎなくかしこまるおもむ返答へんたふに及びおき夫より三五郎を呼出し汝支配しはいの奉行を差越さしこし御家老外記げき殿へ直訴ぢきそに及び候段不屆至極ふとゞきしごくの奴なりと眼玉めだま
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「なにこのたびのお役目は外記げきが申し上げて仰せつけられたのか」
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
その件について老中への執成とりなしを願い出ましたところ、幕府から内命があって、事情を聞くために柴田外記げきが召されました。
正成の諫奏は、内容が内容だけに、そのおりの侍座じざ以外には、かたく口を封じられたが、それですらもうこのていどには六位ノ蔵人くろうど外記げき内記ないきあたりの者にはささやかれていた。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
柴田外記げきが上府したので、彼の江戸番の任期はすでに終り、定日出仕じょうびしゅっしの勤めも解かれたのである。
ひる近くなると、伝馬役所の空気は、何となく、騒がしく感じられた。吟味与力の高梨小藤次は、同じ役所に、同心見習をしている子息の外記げきだの、役所外の目明しや役人を四、五人ほど連れて
雲霧閻魔帳 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
国もとから出府して来た、柴田外記げきと古内志摩(義如よしゆき)、そして片倉小十郎である。
大内裏造営の事業などは、外記げきノ庁内に役署がおかれて
良源院へ着くと、玄関で柴田外記げきと出あった。伊達式部(宗倫むねとも)といっしょで、二人とも麻上下だった。いま帰るところらしく、住職や僧たちが出ていたし、従者たちが式台の下に控えていた。
「おいっ、外記げき、もいちど馬を曳いて来い」
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、外記げきは膝を叩いて
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)