“地所(じしょ)” の例文
地所(じしょ)もあげますと言ってきかないので、お医者さんも、とうとう、では、とにかくやってみましょうと約束しました。
近所(きんじょ)の人々(ひとびと)は、鶏(とり)のために圃(はたけ)や、庭(にわ)を荒(あ)らされるのを苦(く)に思(おも)いましたけれど、家(いえ)や、地所(じしょ)が金持(かねも)ちの所有(しょゆう)であるために、なにもいわずに忍(しの)んでいました。
金持ちと鶏 (新字新仮名) / 小川未明(著)
一段地所(じしょ)が高くなって処どころ椎(しい)の木を植えた処があった。菊江はそこの傾斜の赭地(あかつち)の肌を駈(か)けあがりながら揮返った。背の高い痩せぎすな男の姿はすぐ後にあった。
女の怪異 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
一は上祖師ヶ谷で青山(あおやま)街道(かいどう)に近く、一は品川へ行く灌漑(かんがい)用水の流れに傍(そ)うて居た。此等(これら)は彼が懐(ふところ)よりも些(ちと)反別が広過ぎた。最後に見たのが粕谷の地所(じしょ)で、一反五畝余。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎、徳冨蘆花(著)
少しばかりある株券と地所(じしょ)とは愛子と貞世(さだよ)との教育費にあてる名儀で某々が保管する事になった。そんな勝手放題なまねをされるのを葉子は見向きもしないで黙っていた。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
今の左門(さもん)氏の代になって、広大な地所(じしょ)もすっかり人手にわたってしまって、残るのはお城のような邸宅と、その中に所蔵されているおびただしい古名画(こめいが)ばかりになってしまいました。
怪人二十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
彼処(そこ)でもない此処(ここ)でもないと勝手次第に宜(よ)さそうな地所(じしょ)を見立てゝ、いよ/\芝の三田(みた)にある島原(しまばら)藩の中屋敷が高燥(こうそう)の地で海浜(かいひん)の眺望も良し、塾には適当だと衆論一決はしたれども
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
母がひとり子ども三人、夫婦(ふうふ)をあわせて六人の家族(かぞく)、妻君(さいくん)というのは、同業者のむすめで花前の恋女房(こいにょうぼう)であった。地所(じしょ)などもすこしは所有(しょゆう)しておって、六人の家族は豊(ゆた)かにたのしく生活しておった。
箸 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
「さあ、地所(じしょ)は、あそこに見える空地なんだが」
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「地所(じしょ)を買(か)うこともできる。見物(けんぶつ)に出(で)かけることもできる。」と、独(ひと)り言(ごと)をして、夜(よ)が明(あ)けると、日(ひ)が暮(く)れるまで、夢(ゆめ)を見(み)るような気持(きも)ちでいました。すると、そのとき
天下一品 (新字新仮名) / 小川未明(著)
地所(じしょ)の売買(ばいばい)や、訴訟(そしょう)の代理人(だいりにん)などになって出(で)て、そんなことで報酬(ほうしゅう)を得(え)て、その一家(か)のものは暮(く)らしていたのですが、物識(ものし)りという名(な)が通(とお)っているので、このもののいったことは、村(むら)では
天下一品 (新字新仮名) / 小川未明(著)