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土埃
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つちぼこり
ふりがな文庫
“
土埃
(
つちぼこり
)” の例文
女狩右源太は、ぼこぼこ
土埃
(
つちぼこり
)
の立つ街道を、俯きながらゆるゆると歩いていた。足は、南部の方へ向いていたが心はそれと、一緒ではなかった。
三人の相馬大作
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
往来には人と同じように、道路を利用する癖がまだ残っている。自動車が通ったばかりの後の
土埃
(
つちぼこり
)
の中を、さも用ありげに走って行く影を時々見る。
野草雑記・野鳥雑記:02 野鳥雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
それを見て黒馬が走り葦毛が駆けだし、三頭の馬は
土埃
(
つちぼこり
)
を
掻
(
か
)
き立てながら、
毬
(
まり
)
のようになって新道路を走った。
恐怖城
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
『おい
人車
(
くるま
)
に乘れば好かつたね。』と小池は、
路傍
(
みちばた
)
の柔かい草の上を低い
駒下駄
(
こまげた
)
に踏んで歩きつゝ
土埃
(
つちぼこり
)
の立つことを
防
(
ふせ
)
いでゐるお光の
背後
(
うしろ
)
から聲をかけた。
東光院
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
真昼の太陽に草の露が乾くころには、
墨汁
(
ぼくじゅう
)
をこぼしたかと思われる道ばたの血痕も、
馬蹄
(
ばてい
)
やわらじの
土埃
(
つちぼこり
)
に
蔽
(
おお
)
われて、誰の目にも、ゆうべの修羅が気づかれない。
鳴門秘帖:03 木曾の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
たてがみを振り乱し泡を
噛
(
か
)
んだ馬が、狂ったように
蹄
(
ひづめ
)
で大地を叩き、うしろに
土埃
(
つちぼこり
)
を引きながら殺到して来て、蹄を駕籠に突っかけた。小五郎は「ああ」といった。
鵜
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
元気の無さ
相
(
さう
)
な
顔色
(
かほいろ
)
をして草履を引きずり乍ら帰つて来た貢さんは、
裏口
(
うらぐち
)
を
入
(
はい
)
つて、
虫
(
むし
)
の
蝕
(
く
)
つた、踏むとみしみしと云ふ板の
間
(
ま
)
で、
雑巾
(
ざふきん
)
を
絞
(
しぼ
)
つて
土埃
(
つちぼこり
)
の着いた足を拭いた。
蓬生
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
(著)
平次は彦兵衛を起してやって、その胸から膝へ一面に付いた
土埃
(
つちぼこり
)
を払ってやりました。
銭形平次捕物控:075 巾着切りの娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
目が廻るのか、額を流れる汗が眼に入るのか、眼をつむったまま
憑
(
つ
)
かれたもののように身体を烈しく動かした。よろめいて、身体を壕の壁で支えた。電灯の光まで
土埃
(
つちぼこり
)
がうっすらと上って来た。
桜島
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
土埃
(
つちぼこり
)
が立つように乾いて春光が
和
(
のど
)
かに輝いているのに、ひとたび同じ街の裏の方へ廻って見ると、雪は屋根の高さまで積まれ、人々は徳川時代さながらに雪の穴居生活の状態をしているのである。
雪
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
馬車は煙のような
土埃
(
つちぼこり
)
を上げて動きだした。そして、市街地から高原地帯の道へと、馬車は走っていった。
恐怖城
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
土埃
(
つちぼこり
)
をはたきながら、二人の去っていったほうをもう一度、祝福するような眼つきで眺めやった。
榎物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「いや、変る道理がない。眼の前で黒助が拾って、
土埃
(
つちぼこり
)
を払って渡してくれたのだ」
銭形平次捕物控:022 名馬罪あり
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
そのもがいてよろめく足もとから白い
土埃
(
つちぼこり
)
が舞うのを浴びて、宅助はうなるように
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
哀
(
あは
)
れ
氣
(
げ
)
な聲を出して、
動
(
やゝ
)
もすれば
後
(
おく
)
れて
了
(
しま
)
ひさうなお光は、高く着物を
端折
(
はしを
)
り、
絽縮緬
(
ろちりめん
)
の
長襦袢
(
ながじゆばん
)
の
派手
(
はで
)
な
友染模樣
(
いうぜんもやう
)
を
鮮
(
あざや
)
かに現はして、小池に負けぬやうに、
土埃
(
つちぼこり
)
を蹴立てつゝ歩き出した。
東光院
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
土埃
(
つちぼこり
)
にまみれた半顔が、変に蒼白かった。私はぎょっとして、立ち止った。草の葉に染められた毒々しい血の色を見たのだ。
総身
(
そうみ
)
に冷水を浴びせかけられたような気がして、私は
凝然
(
ぎょうぜん
)
と立ちすくんだ。
桜島
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
土埃
(
つちぼこり
)
が、額へまで、こびりついた。
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
彼の足もとから、白っぽい
土埃
(
つちぼこり
)
が舞い立ち、小さなその躰はみるみるうちに遠ざかっていった。
おさん
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
自動車は白い
土埃
(
つちぼこり
)
を上げ、乾燥し切った秋の空気を切って日照りの街中を走った。
猟奇の街
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
濛々
(
もうもう
)
たる
土埃
(
つちぼこり
)
が戦場を
蔽
(
おお
)
い隠した。その黄色い土煙の中に太刀が飛び、槍が
閃
(
ひらめ
)
いた。
蒲生鶴千代
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
矢は一文字に飛んで狼の
頸
(
くび
)
の根元へぴゅっ、射止めたかと見た
刹那
(
せつな
)
、狼はひょいと体を
捻
(
ひね
)
って、ととととと、四五間走って立停る、矢は地面を向いて、
土埃
(
つちぼこり
)
をあげながら遠く外れてしまった。
備前名弓伝
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
土
常用漢字
小1
部首:⼟
3画
埃
漢検1級
部首:⼟
10画
“土”で始まる語句
土産
土
土地
土塀
土間
土器
土手
土瓶
土堤
土耳古