卓子ていぶる)” の例文
... しめて来たまえ(大)夫や実に難有ありがた畢生ひっせい鴻恩こうおんだ」谷間田は卓子ていぶるの上の団扇うちわを取り徐々しず/\と煽ぎながら少し声を低くして
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
「そこだ!」と海野は一喝して、はたと卓子ていぶるを一うちせり。かかりしあいだ他の軍夫は、しばしば同情の意を表して、舌者の声を打消すばかり、熱罵ねつばを極めて威嚇いかくしつ。
海城発電 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そのお祝ひの卓子ていぶるで、私は二人の喜びを胸一杯に享け入れて目出度い盃を挙げながら——うつら/\と、おゝ、それは二年ばかり前の春の時分であつたかな! などゝ
満里子のこと (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
青白い顔をした女が可厭いやあな眼付をして、真白な猫を抱いてゐたらう? 卓子ていぶるの上にはひろげた手紙があつて、女の頭へ蔽被おつかぶさる様に鉢植の匂ひあらせいとうが咲いてゐた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
其処そこだ!」と海野は一喝いっかつして、はたと卓子ていぶる一打ひとうちせり。かかりしあいだ他の軍夫は、しばしば同情の意を表して、舌者ぜっしゃの声を打消すばかり、熱罵ねつばを極めて威嚇いかくしつ。
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
蹌踉よろめきて卓子ていぶるたおれ掛り、唯口の中にて「私しでは有りません、私しでは有りません」と呟くのみ。
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
調剤室にも、医員の室にも、煙草が常に卓子ていぶるの上に備へてある。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
果して卓子ていぶる其他の抽斗ひきだしよりは目科の推量せし通り倉子よりの艶書ふみも出でかつ其写真も出たる上、猶お争われぬだいの証拠と云う可きは血膏ちあぶらの痕を留めしいと鋭き両刃もろはの短剣なり
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
この時までも目を放たで直立したりし黒衣の人は、濶歩坐中にゆるいでて、燈火を仰ぎ李花にして、厳然として椅子にり、卓子ていぶる片肱かたひじ附きて、眼光一せん鉛筆のさきすかし見つ。
海城発電 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
直ちに入口の戸を叩くに内より「さアお這入はいさい」との声聞ゆ、鍵は錠の穴に差込みしまゝなれば二人は遠慮なく戸を開きて内にる、内には窓の下なる卓子ていぶるに打向い
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
この時までも目を放たで直立したりし黒衣の人は、濶歩かっぽ坐中にゆるいでて、燈火を仰ぎ李花にして、厳然として椅子にり、卓子ていぶる片肱かたひじ附きて、眼光一閃いっせん鉛筆のさきすかし見つ。
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「そこだ。」と今卓子ていぶるを打てる百人長はおおいに決する処ありけむ、きっと看護員に立向たちむかいて
海城発電 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
拭きながら帰り来りすぐに以前の詰所に入り「オヤ大鞆は、フム彼奴何か思いついて何所かへ行たと見えるな」云いつゝ先ず手帳紙入などつかみ出して卓子ていぶるに置き其上へ羽織を脱ぎ其又上へ帽子を
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
其処そこだ。」と今卓子ていぶるを打てる百人長は大に決する処ありけむ、きっと看護員に立向ひて
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
余の心が他の女に移る緒口いとぐちだと見たのでも有ろう、唯機嫌の好いのは余一人だ、三人三色の心持で、卓子ていぶるに附いて居ると、松谷秀子は、真に美人で無くては歩み得ぬ娜々なよなよとした歩み振りで遣って来た
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
ちら/\ゆき晩方ばんがたでした。……わたくしは、小児こども群食むらぐひで、ほしくない。両親りやうしん卓子ていぶる対向さしむかひで晩飯ばんめしべてた。其処そこへ、彫像てうざうおぶつてはいつたんですが、西洋室せいやうまひらきけやうとして
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)