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切羽
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せっぱ
ふりがな文庫
“
切羽
(
せっぱ
)” の例文
そんな自分勝手な考えしか
切羽
(
せっぱ
)
詰って来ると浮びませんでした。とつおいつ、僕は遂に夢中になって貴女をあの日、撲ったのでした。
越年
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
が——先も足首に気構えをとっていたとみえて、いきなり、お綱の胸に片膝をのせたまま、ぱちッと、太刀の
切羽
(
せっぱ
)
。抜き合せに受けた。
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
妻子を泣かせながらも、一杯の焼酎をひっかけないではいられないような、
切羽
(
せっぱ
)
つまった生活をしている人が大多数だという抗議である。
無知
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
その世にも哀れに打叩く声音というものは、全く血を吐くような
切羽
(
せっぱ
)
のうめきがあることを、聞きのがすわけにはゆきません。
大菩薩峠:39 京の夢おう坂の夢の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
切羽
(
せっぱ
)
つまったヤンが
拳銃
(
ピストル
)
をだそうとすると、その手にまたパッと
跳
(
と
)
びついた。それなり二人は、ひっ組んだまま地上を転がりはじめたのだ。
人外魔境:01 有尾人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
▼ もっと見る
わけのわからないその相手をほとんど懐疑に陥れることによって諦めさすというような
切羽
(
せっぱ
)
つまった方法を意味していた。
のんきな患者
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
それから父は、家族連中の環視の中で、先祖重代の刀を取出して、その
切羽
(
せっぱ
)
とハバキの金を剥ぎ、
鍔
(
つば
)
の中の
金象眼
(
きんぞうがん
)
を掘出して白紙に包んだままどこかへ出て行った。
父杉山茂丸を語る
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
まさか命にかかわるという
切羽
(
せっぱ
)
詰った問題ではないでしょう、ところがこっちはそうはいかないんです、その場でなんとかしなければ当人の立つ瀬がないんですから
思い違い物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そこでこういう奇蹟めいたことが、
切羽
(
せっぱ
)
詰まったこんな場合に、両個の間に行われたのであった。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
お雪はもう
切羽
(
せっぱ
)
つまったところへ、小僧の勇吉があとから駈けて来て、これも出刃庖丁を振りかざして、やにわに長太郎に斬ってかかった。二人は短刀と出刃庖丁とで闘った。
半七捕物帳:16 津の国屋
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
無宙ではあったが、女性の本能が、彼女にある
切羽
(
せっぱ
)
つまったものを感じさせたのだ。彼女は、血刀を提げた男性の、腕の中に抱かれて、何もかも、奥深い秘密を察知したのだ。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
一度だけでも……おせいは
切羽
(
せっぱ
)
つまった気持の中で、悲しい嬉しい瞬間を心に描いた。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
「さあ……。」と私は口籠りながら、余りの意外さに躊躇したものの、相手の
急
(
せ
)
き込んだ語気からして、何かしら
切羽
(
せっぱ
)
つまった心を感じて、兎も角もお出でなさいと承知してしまった。
或る男の手記
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
衰弱しきった神経が
厭
(
いと
)
ったのであったが、あの日記には美と夢とがあまりすくなくて、あんまり息苦しいほどの、
切羽
(
せっぱ
)
詰った生活が露骨に示されているのを、私は何となく、
胸倉
(
むなぐら
)
をとられ
樋口一葉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
切羽
(
せっぱ
)
詰った生活の場で、三ヵ月後払い、指定銀行払いの小切手というややこしい形式であっても、石田氏の俸給より、はるかに上廻る金が、毎月、滞りなく入ってるのは、ありがたすぎて
我が家の楽園
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
よっぽど、
切羽
(
せっぱ
)
つまることがあったにちがいありません。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
「左様——この
暗
(
やみ
)
では、奇異な装剣も、
切羽
(
せっぱ
)
の
象嵌
(
ぞうがん
)
も、よく見ることはできなかろう。おう、時に万殿、
何刻
(
なんどき
)
であろう」
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その通り——伊東が芹沢と同じような運命に送られるか、或いは新勢力が旧組を圧倒して立つかの
切羽
(
せっぱ
)
になった。
大菩薩峠:39 京の夢おう坂の夢の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
より効果的にしようとする人々の
切羽
(
せっぱ
)
詰まったような気分が街に
籠
(
こも
)
って、銀ブラする人も、裏街を飲んで歩く青年たちにも、こつんとした感じが加わった。
越年
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
悪いことと知りながら、何か罪を犯すのは、たいていの場合、よほど
切羽
(
せっぱ
)
つまった事情にあるからである。
無知
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
それも考えてみれば未練とは言ってもやはり夜中なにか起こったときには相手をはっと気づかせることの役には立つという
切羽
(
せっぱ
)
つまった
下心
(
したごころ
)
もは入っているにはちがいなく
のんきな患者
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
切羽
(
せっぱ
)
、詰まった大罪犯す……スカラカ、チャカポコ。チャカポコチャカポコ……。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
彼らは死に対してけんかをしかけんばかりの
切羽
(
せっぱ
)
つまった心持ちで出かけて行く。陸の上ではなんと言っても偽善も
弥縫
(
びほう
)
もある程度までは通用する。ある意味では必要であるとさえも考えられる。
生まれいずる悩み
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
切羽
(
せっぱ
)
つまって、追いはらうつもりで無我夢中にひろって投げた石が、まともに蛇の頭へあたり、尾で草をうちながら
蓬
(
よもぎ
)
のあいだをのたうちまわっていたが、間もなく、白い不気味な腹を上へむけて
顎十郎捕物帳:15 日高川
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
結局、小鉄も
切羽
(
せっぱ
)
つまって、ダルトンと自分との関係を明かしたが、梁福はまだ素直に信用しない。その
悶着
(
もんちゃく
)
の最中に、椰子の梢でがさがさという音がして、大きい一つの実が小鉄の頭の上に……。
探偵夜話
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
と、
切羽
(
せっぱ
)
詰まって、荒々しく響いた。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
固唾
(
かたず
)
を呑んでこの活劇を見物している群衆さえ、今は緊張の極になって、泣き出しそうになっている
切羽
(
せっぱ
)
に、子鉄の両手が、今まで手をつける余裕さえなかった
大菩薩峠:32 弁信の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
口減らしなら口減らしの他の策も、
切羽
(
せっぱ
)
詰
(
つま
)
った必要ならその必要の算段にはほかの考え方もあったろうにと、ぼくは浜子の死後、腹立たしさに、母にさえ何か喚いた覚えがある。
忘れ残りの記:――四半自叙伝――
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それ程の
切羽
(
せっぱ
)
つまった現在の戦況であるにしても、これは又、何という残酷な事をするのだろうと
慄
(
ふる
)
え上っていると、又も更に驚いた事には、その候補生が自分の膝を、泥と血だらけの両手に掴んで
戦場
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
またすっかり行きつまっちゃったもんだから……西山か星野でもいるとどうにかさせるんだが(こりゃ少しうそがすぎたかなと思ったが園がその言葉には無関心らしく見えるのですぐ追っかけて)ちょうどいないもんだから
切羽
(
せっぱ
)
つまったのさ。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
切羽
(
せっぱ
)
つまった末に、とうとう
駈落
(
かけおち
)
と覚悟をきめて、ある夜、しめし合わせ、手に手をとって駈落を決行したが、その時、若い美僧は、重々悪いこととは知りながら
大菩薩峠:40 山科の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
三位卿の剣は力まかせにつづらの
蓋
(
ふた
)
をブスッと
貫
(
ぬ
)
いて
切羽
(
せっぱ
)
の辺まで突き通って行った。
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
まずこの
目貫
(
めぬき
)
でございますな、これが金獅子ぼたんでございますよ、もとより
金無垢
(
きんむく
)
——しかも
宗珉
(
そうみん
)
というところは動かないところでげして、それからはばきが金、
切羽
(
せっぱ
)
が金
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
何か分からぬが、短剣じゃ、
柄
(
つか
)
は夜光珠にちりばめられ、なかごは
直身
(
じきしん
)
、
切羽
(
せっぱ
)
の上に
象嵌
(
ぞうがん
)
がある。
眼
(
まなこ
)
をこらしてよく見ると、青金、
赤金
(
しゃっきん
)
、黄金の三色の金であらわした南欧の少女の顔が浮いている
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
すっかりわかりました、あんな
浄瑠璃
(
じょうるり
)
の中の人たちのように、
切羽
(
せっぱ
)
つまったやる瀬のない気持でなく、本当にこんなに愉快を尽して死ねるのです、わたしは幸福です、この気分の
醒
(
さ
)
めないうちに
大菩薩峠:38 農奴の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
忘れようとしてもかの女には忘れることができますまい——あの獄門橋の
袂
(
たもと
)
で、
切羽
(
せっぱ
)
つまッた果てに、生れて初めて人ひとりを突き殺したせつな——
匕首
(
あいくち
)
の
柄
(
つか
)
から指の股へと流れた人間の血の
温
(
ぬく
)
みを。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
切
常用漢字
小2
部首:⼑
4画
羽
常用漢字
小2
部首:⽻
6画
“切羽”で始まる語句
切羽詰