切目きれめ)” の例文
それは、足の裏を切ったまま砂浜にあがると、その切目きれめの中に小さい砂がはいりこんで、やがて激痛げきつうをおこすことになる。
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
久しゅう大火にいて筆記を休んで居りましたが、跡も切目きれめになりましたから一席弁じます事で
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
年齢は法水と同様三七、八がらみ、血色のよいヤフェクト風の丸顔で額が抜け上り、ちょっと見は柔和な商人体の容貌であるが、眼だけは、切目きれめ穂槍ほやり形に尖っていて鋭かった。
聖アレキセイ寺院の惨劇 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
それへ出ると、何処どこでも広々と見えますので、最初左の浜庇はまびさし、今度は右のかやの屋根と、二、三箇処がしょ、その切目きれめへ出て、のぞいたが、何処どこにも、祭礼まつりらしい処はない。海はあかるく、谷はけぶって。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
其れでジユツプには改良の余地が一寸ちよつと見付からないが、盛装ロオヴの裾に幾段もひだを附けたり、又その裾にちがつた切目きれめを附けたりするので一生面せいめんを開くであらう。して白又は金茶が流行の色となるのであらう。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
ひろきよりせばみ暮れゆく其果そのはてとほ切目きれめ
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
この際一際ひときわ色の濃く、あざやかに見えたのは、屋根越に遠く見ゆる紅梅の花で、二上屋の寮の西向の硝子がらす窓へ、たらたらと流るるごとく、横雲の切目きれめからとばかりの間、夕陽が映じたのである。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
どうして?ッて、見たまえ、いつもは、手拭てぬぐいを当てても堰留せきとめられそうな、田の切目きれめが、薬研形やげんなりに崩込んで、二ツ三ツぐるぐると濁水にごりみずの渦を巻く。ここでは稲が藻屑もくずになって、どうどう流れる。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
對岸たいがん(——はしわたつてくるまはら宿しゆくうら眞正面ましやうめんさかのぼる——)に五層ごそう七層しちそうつらねたなかに、一所ひとところむねむねとのたか切目きれめに、もみけやきか、おほいなる古木こぼく青葉あをばいて、こずゑから兩方りやうはうむねにかゝり
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)