トップ
>
凹地
>
くぼち
ふりがな文庫
“
凹地
(
くぼち
)” の例文
恁う言ひ乍ら、渠はその目を移して西山の
巓
(
いただき
)
を見、また、
凹地
(
くぼち
)
の底の村を瞰下した。
古昔
(
いにしへ
)
の尊き使徒が異教人の国を望んだ時の心地だ。
赤痢
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
富士の美しく
霞
(
かす
)
んだ下に大きい
櫟林
(
くぬぎばやし
)
が黒く並んで、
千駄谷
(
せんだがや
)
の
凹地
(
くぼち
)
に新築の家屋の
参差
(
しんし
)
として連なっているのが走馬燈のように早く行き過ぎる。
少女病
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
高山
(
こうざん
)
にはよくさういふ
凹地
(
くぼち
)
に
水
(
みづ
)
を
湛
(
たゝ
)
へて、
時
(
とき
)
には
沼地
(
ぬまち
)
を
形
(
かたち
)
づくり、
附近
(
ふきん
)
の
岩
(
いは
)
の
間
(
あひだ
)
に
雪
(
ゆき
)
をためてゐたりするところがあります。
森林と樹木と動物
(旧字旧仮名)
/
本多静六
(著)
もう、
凹地
(
くぼち
)
の家には水が出たらしく、あわただしく叫びかわす人声と、提灯の灯とが、物ものしく、
闇黒
(
やみ
)
に交錯していた。
あの顔
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
摺鉢形の
凹地
(
くぼち
)
の底に淀んだ池も私にはかなりグルーミーなものに見えた。池の中島にほうけ立った草もそうであった。
雑記(Ⅰ)
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
▼ もっと見る
無數の異つた種類の苔が、その
凹地
(
くぼち
)
を埋めて、咲き亂れた
野生
(
やせい
)
の
櫻草
(
さくらさう
)
の中から、不思議な地面の光を放つてゐた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
ただ川を下って来る
筏師
(
いかだし
)
の話では、谷の奥の
八幡平
(
はちまんだいら
)
と云う
凹地
(
くぼち
)
に炭焼きの部落が五六軒あって、それからまた五十丁行ったどんづまりの
隠
(
かく
)
し
平
(
だいら
)
と云う所に
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
その辺り一帯は、今も残る通りの
凹地
(
くぼち
)
であって、底には池があった。周囲の崖には昼も暗い程大木が
矗々
(
ちくちく
)
と茂っていた。夏は赤く水の濁った池で子供が泳いだ。
四谷、赤坂
(新字新仮名)
/
宮島資夫
(著)
小石川富坂
(
こいしかわとみざか
)
の片側は
砲兵工廠
(
ほうへいこうしょう
)
の
火避地
(
ひよけち
)
で、樹木の茂った間の
凹地
(
くぼち
)
には
溝
(
みぞ
)
が小川のように美しく流れていた。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
そして、とうとう、私が革舟を
担
(
かつ
)
いで、夕食を食べたその
凹地
(
くぼち
)
から
躓
(
つまず
)
きながら手探りして出た時には、その碇泊所全体で目に見える箇所はたった二つしかなかった。
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
その山の高い事といったら想像も及ばないほどで、その下は一面に広い
凹地
(
くぼち
)
になっている。
月世界跋渉記
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
そして、誰も見ていないのが判ると、そのまま四つ這で、周章てて、
凹地
(
くぼち
)
の所まで走った。
近藤勇と科学
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
それは二、三の
凹地
(
くぼち
)
をうずめ
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
あわれ日影の
凹地
(
くぼち
)
へ
野ざらし
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
それは、廣々とした丘の
凹地
(
くぼち
)
をとりまいてゐる氣高い連山の、
濃
(
こま
)
やかな青緑と陰影の多い見晴しや、黒い岩や泡立つ渦にみちた輝かしい溪流を見ることであつた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
岩のすぐ下手に、緑の芝地のごく小さな
凹地
(
くぼち
)
があって、それが、土手と、その辺にすこぶるたくさん生えている膝くらいまでの高さのこんもりした
下生
(
したばえ
)
とで隠されていた。
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
戸外は秋の灰色に曇った日、山の温泉場はやや
閑
(
ひま
)
で、この小屋の前から見ると、低くなった
凹地
(
くぼち
)
に二階三階の家屋が連って、
大湯
(
おおゆ
)
から絶えず立ちあがる湯の煙は静かに白く
靡
(
なび
)
いていた。
ネギ一束
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
人里と云うものは
挟間
(
はざま
)
があればどこまでも伸びて行くものと見えて、その三方を峰のあらしで囲まれた、
袋
(
ふくろ
)
の奥のような
凹地
(
くぼち
)
の、せせこましい川べりの
斜面
(
しゃめん
)
に段を築き、草屋根を構え
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
間が浅い
凹地
(
くぼち
)
になつて、浮世の廃道と謂つた様な、塵白く、石多い、
通行
(
とほり
)
少い往還が、其底を
一直線
(
ましぐら
)
に貫いてゐる。
両
(
ふたつ
)
の
丘陵
(
おか
)
は中腹から耕されて、
夷
(
なだら
)
かな勾配を作つた畑が家々の裏口まで迫つた。
赤痢
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
あわれ日影の
凹地
(
くぼち
)
へ
野ざらし
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
凹
常用漢字
中学
部首:⼐
5画
地
常用漢字
小2
部首:⼟
6画
“凹”で始まる語句
凹
凹凸
凹所
凹字
凹路
凹垂
凹込
凹間
凹面鏡
凹入