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其心
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そのこゝろ
不埒ならずや
身こそ
零落たれ
許嫁の
縁きれしならずまこと
其心なら
美くしく
立派に
切れてやりたし
切れるといへば
貧乏世帶のカンテラの
油
寧ろ
其心ばせの
眞率で
無邪氣な
處を
思へば
實に
美しさを
感ずるのです、
僕は。
用ひて
浮々とせし
樣子に
扨は
眞に
悔悟して
其心にもなりぬるかと
落附くは
運平のみならず
内外のものも
同じこと
少し
枕を
假令身にかへ
命にかへても
盡くし
參らする
心なるを、よしなき
御遠慮はお
置き
下されたしと
恨み
顏なり、これ
程までに
思ひくるゝ、
其心知らぬにも
有らぬを、この
頃の
不愛想我が
心の
悶ゆるまゝに
呼びたりとか
病の
元はお
前様と
云はるゝも
道理なり
知らざりし
我恨めしくもらさぬ
君も
恨めしく
今朝見舞ひしとき
痩せてゆるびし
指輪ぬき
取りてこれ
形見とも
見給はゞ
嬉しとて
心細げに
打ち
笑みたる
其心今少し
早く
知らば
斯くまでには
衰へさせじを