おとな)” の例文
「取って頂くよ。」とおとなしく会釈する、これが神月と呼ばれた客で、名をあずさという同窓の文学士、いずれも歴々の人物である。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ねこあいちやんをて、たゞその齒並はなみせたばかりでした。おとなしさうだとあいちやんはおもひました、矢張やつぱりれが大層たいそうながつめ澤山たくさんとをつてゐたので、鄭重ていちやうにしなければならないともかんがへました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
「おい、声を出しちゃあ不可いかん、黙っていな、おとなしくしてついておいで。あれそれ謂っちゃあ第一何だ、お前の恥だ。往来で見ッともない、人が目をつけて顔を見るよ。」
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
『それは上等じやうとう牛酪バターでした』と三月兎ぐわつうさぎおとなしやかにこたへました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
母親の富とは大違いな殊勝な心懸こころがけ、自分の望みで大学病院で仕上げ、今では町住居ずまいの看護婦、身綺麗みぎれいで、容色きりょうくって、ものが出来て、深切で、おとなしいので、寸暇のない処を
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
きやくわたしのほかに三人さんにんあつた。三人さんにんは、親子おやこづれで、こゝのツばかりの、かすり羽織はおりおな衣服きものおとなしらしいをとこ。——見習みならへ、やつこ、と背中せなかつゝいてりたいほどな、人柄ひとがらなもので。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
桂木は伸びて手首をおおはんとする、襯衣しゃつそでき上げたが、手も白く、たたかいいどむやうではないおとなしやかなものであつた、けれども、世に力あるは、かえつてかかる少年の意を決した時であらう。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)