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したは
下葉は
黄色くなつて
居たがそれでも
麥が
暫く
日を
掩うたので
皆根づいて
生長しかけて
居た。
初霜を
避けて、
昨夜縁に
上げられた
白菊であろう、
下葉から
次第に
枯れてゆく
花の
周囲を、
静かに
舞っている一
匹の
虻を、
猫が
頻りに
尾を
振ってじゃれる
影が、
障子にくっきり
映っていた。
一葉女史はおのれと
同じ
園生にありて
萩の
舍の
露におほし
立られし
下葉なり
萩の
舍中島の
師は
常にいにしへぶりのしなたかきを
教さとし
給へれど
性來のすき
心によの
耳ちかく
俗に
今樣の
情態を
散りかゝった
満庭のコスモスや、咲きかゝった菊や、残る紅の
葉鶏頭や、
蜂虻の群がる
金剛纂の白い大きな花や、ぼうっと黄を含んだ芝生や、
下葉の
褐色に
凋れて
乾いた萩や白樺や落葉松や
滾れもあへず、
下葉の
面をゆり動かせば