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ぶせう
生暖かい
風の
吹く日であつた。
曇つた天気が
何時迄も
無精に
空に
引掛つて、
中々暮れさうにない四時過から
家を
出て、
兄の
宅迄電車で行つた。
よく
是れで
寒く
無いのう、お
節介なれど
私がおこして
遣りませう、
炭取を
此處へと
仰しやるに、
書生はおそれ
入りて、
何時も
無精を
致しまする、
申譯の
無い
事でと
有難いを
迷惑らしう
「
食ふに
困らないと思つて、さう
無精な
顔をしなくつて
好からう。もう少し
判然として
呉れ。
此方は
生死の
戦だ」と云つて、寺尾は
小形の本をとん/\と
椅子の
角で二返
敲いた。
是から
推上らうと
云ふのに
一呼吸つくらしく、フト
停まると、
中でも
不精らしい
簑の
裾の
長いのが、
雲のやうに
渦いた
段の
下の、
大木の
槐の
幹に
恁懸つて、ごそりと
身動きをしたと
思へ。