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ぎよぞく
天涯渺茫たる
絶海の
魚族は、
漁夫の
影などは
見た
事もないから、
釣れるとか
釣れぬとかの
心配は
入らぬ、けれど
餘りに
巨大なるは
けれど
汝は
卑しくも
魚族の
王の、
此の
父が
世をさつたらばその
後を
嗣ぐべき
尊嚴い
身分じや。
决して
輕々しいことをしてはならない。よいか
かれ
足無して地をはしり、
倒れてふたゝび
起ざるなど、
魚族中
比ふべきものなきは
奇魚といふべし。
此魚族は、
極めて
性質の
猛惡なもので、
一時に
斯く
押寄せて
來たのは、
疑もなく、
吾等を
好き
餌物と
認めたのであらう。
私も
其群を
見て
忽ち
野心が
起つた。
海中の
魚族にも、
優勝劣敗の
數は
免かれぬと
見へ、
今小い
沙魚の
泳いで
居つた
波の
底には、
驚く
可き
巨大の一
尾が
居りて、
稻妻の
如く
躰を
跳らして、
只一
口に
私の
釣ばりを
呑んでしまつたのだ。