餘程よほど)” の例文
新字:余程
勿論もちろんいま境涯きやうがいとてけつして平和へいわ境涯きやうがいではないが、すでにはら充分じゆうぶんちからがあるので、すぐよりは餘程よほど元氣げんきもよく、赫々かく/\たる熱光ねつくわうした
其の時戸外おもてには餘程よほど前から雨が降つてゐたと見えて、點滴の響のみか、夜風が屋根の上にと梢から拂ひ落すまばらな雫の音をも耳にした。
花より雨に (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
餘程よほど大火おほびかなければ、馬籠まごめにてたるごとあとのこすものでない。かまどとか、とか、それくらゐため出來できたのではおそらくあるまい。
成程なるほどむしふくろでは大分だいぶ見當けんたうちがひました。……つゞいてあまあついので、餘程よほどばうとしてるやうです。失禮しつれい可厭いやなものツて、なにきます。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
祖母おばあさんがほほつゝんでくださるあつ握飯おむすびにほひでもいだはうが、おあししてつたお菓子くわしより餘程よほどおいしくおもひました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
が、くさたけ落葉おちばは、一めんあらされてりましたから、きつとあのをとこころされるまへに、餘程よほど手痛ていたはたらきでもいたしたのにちがひございません。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
其後そのご支那しなから、道教だうけう妖怪思想えうくわいしさうり、佛教ぶつけうとも印度思想いんどしさうはいつてて、日本にほん化物ばけもの此爲このため餘程よほど豊富ほうふになつたのである。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
この土器どき石器せつきも、日本につぽんのものは餘程よほどちがつたところがありまして、石器時代せつきじだいすゑ金屬きんぞく使用しようされるようになつた時代じだいのものかもれません。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
餘程よほど入組いりくみ事柄ことがらなりと申上られければ將軍家にも再吟味さいぎんみと有れば越前守が宜しからんと大岡殿へ人撰にんせんにて仰付られけるこゝに於て榊原殿より傳吉を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
また此時このとき死人しにん首府しゆふ總人口そうじんこう三分さんぶんめたこともしるされてあるから、地震ぢしん餘程よほど激烈げきれつであつたことも想像そう/″\される。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
ねえさん、障子しやうじるときは、餘程よほど愼重しんちようにしないと失策しくじるです。あらつちや駄目だめですぜ」とひながら、小六ころくちや縁側えんがはからびり/\やぶはじめた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
卯平うへいもとは餘程よほどくるつてた。かれはすつと燐寸マツチつたが落葉おちばたつするまでにはかすかなけぶりてゝえた。燐寸マツチはさうして五六ぽんてられた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「もう餘程よほどひさしいことでございます。あれは豐干ぶかんさんが松林まつばやしなかからひろつてかへられた捨子すてごでございます。」
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
『ナニへびだ、へびだ!』と繰返くりかへしましたがはとは、以前まへよりも餘程よほどやさしく、其上そのうへ可哀相かあいさう歔欷すゝりなきまでして、『わたし種々いろ/\經驗ためしたが、へび似寄によつたものはほかなにもない!』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
人々ひと/″\餘程よほど田舍ゐなかにゐてもめばみやこで、それ/″\たのしくをさまつてゐるのとおなじように、植物しよくぶつ𤍠あついところであらうと、さむいところであらうと、生育せいいく出來できかぎりそれ/″\
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
いやうも團子だんごべさせること出來できぬとて一日いちにち大立腹おほりつぷくであつた、大分だいぶ熱心ねつしん調製こしらへたものとえるから十ぶんべて安心あんしんさせてつてれ、餘程よほどうまからうぞと父親てゝおや滑稽おどけれるに
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
このをとこくらべると流石さすがのブリダアの市人まちびと餘程よほど勤勉きんべんたみはんければならない、にしろラクダルのえら證據しようこは『怠惰屋なまけや』といふ一個ひとつ屋號やがうつくつてしまつたのでも了解わかる、綉工ぬひはくやとか珈琲屋かうひいやとか
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
日出雄少年ひでをせうねん二名にめい水兵すいへいもくして一言いちげんなく、稻妻いなづま終夜よもすがらとうしにえたので餘程よほどつかれたとえ、わたくしかたわらよこたはつてる。
徳川家康とくがはいへやすかずして家康徳川いへやすとくがはといい、楠正成くすのきまさしげかずして正成楠まさしげくすのきといひ、紀貫之きのつらゆきかずして貫之紀つらゆききといふべきか。これは餘程よほどへんなものであらう。
誤まれる姓名の逆列 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
御月番の御老中へあて急飛きふひを差立らるこゝに又天一坊の旅館りよくわんには山内伊賀亮常樂院赤川大膳藤井左京等なほ密談みつだんに及び大坂は餘程よほどとむなり此處にて用金ようきん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あのちひさな建築技師けんちくぎしが三がいも四かいもあるてゝ、一かいごと澤山たくさん部屋へやつくるのですから、そこには餘程よほどあはせたちからといふものがはいつてるのでせう。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
おほきい博物館はくぶつかんをつくることはかねさへあれば容易よういでありますが、博物館はくぶつかんをつくることは金以外かねいがいさら知識ちしき必要ひつようでありますから、餘程よほど困難こんなんなことになります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
矢張やつぱ物質的ぶつしつてき必要ひつえうかららしいです。さきなんでも餘程よほど派出はでうちなんで、叔母をばさんのはうでもさう單簡たんかんまされないんでせう」と何時いつにない世帶染しよたいじみたことつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そとやみである。となりもりすぎがぞつくりとえたそらんでる。おしないへ以前いぜんからもりめに餘程よほどみなみまはつてからでなければにはひかりすことはなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
も、晩飯ばんたのしみにしてたのであるから。……わたしじつは、すきばら餘程よほどこたへた。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
地震ぢしん出會であつてそれが非常ひじよう地震ぢしんであることを意識いしきしたものは、餘程よほど修養しゆうようんだひとでないかぎり、たとひ耐震家屋内たいしんかおくないにゐても、また屋外避難おくがいひなん不利益ふりえき場合ばあひでも、しかせんとつとめるであらう。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
その風采ふうさい餘程よほどちがつてるが相變あひかはらず洒々落々しや/\らく/\おとこ『ヤァ、柳川君やながはくんか、これはめづらしい、めづらしい。』としたにもかぬ待遇もてなしわたくししんからうれしかつたよ。
すなはわたしふばけものは、餘程よほど範圍はんゐひろ解釋かいしやくであつて、世間せけん所謂いはゆる化物ばけものは一の分科ぶんくわぎないこととなるのである。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
ひとかな失禮しつれいながら貴殿は未だ御若年ごじやくねんで有りながら御見請申せば餘程よほど逆上ぎやくじやう今の間に御療治なければ行末ゆくすゑ御案事おあんじ申なりと取ても付ぬ挨拶あいさつに千太郎は身を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
日本につぽん石器時代せつきじだいには土器どき餘程よほどさかんに使用しようされてゐましたとえ、どの遺跡いせきにもおほくの土器どき發見はつけんされます。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
ねつ普通ふつう風邪かぜよりも餘程よほどたかかつたので、はじめ御米およねおどろいたが、それは一時いちじことで、すぐ退いたには退いたから、これでもう全快ぜんくわいおもふと、何時迄いつまでつても判然はつきりしなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かれはおしながこつそり蒲團ふとんしたいれれた煎餅せんべいかぢつたりして二三にちごろ/\してた。ころ駄菓子店だぐわしみせ滅多めつたかつたのでだけのことがおしなには餘程よほど心竭こゝろづくしであつたのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それぢや餘程よほどひろいのか、とふのに、またうでもない、ものの十四五ふん歩行あるいたら、容易たやす一周ひとまは出來できさうなんです。たゞし十四五ふん一周ひとまはりつて、すぐにおもふほど、せまいのでもないのです。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
建築けんちく耐震的考慮たいしんてきかうりよくはふるとは、地震ぢしん現象げんしやう考究かうきうして、材料ざいれう構造こうざう特殊とくしゆ改善かいぜんくはふることで、これは餘程よほど人智じんち發達はつたつし、社會しやくわい進歩しんぽしてからのことである。
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
私はあなたが家事の暇をぬすんで『傳説の時代』をとう/\仕舞しまひまで譯し上げた忍耐と努力に少からず感服して居ります。書物になつて出ると餘程よほどの頁數になるさうですがさぞ骨の折れた事でせう。
『伝説の時代』序 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かくれましたが、ほつそりしたうでいたしたに、ちらりとむすえました……扱帶しごきはしではござりません……たしかにおびでござりますね、つき餘程よほどらしうござります……成程なるほど人目ひとめちませう。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
世間せけんで一くち化物ばけものといふと、なに妖怪變化えうくわいへんげ魔物まものなどを意味いみするやうできはめて淺薄せんぱくらしくおもはれるが、わたしかんがへてるばけものは、餘程よほどふか意味いみるものである。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)