くるま)” の例文
そこは、ちょうどまちのまがりかどになっていました。くるまがとおります。ひとあるいていきます。それは、ほんとうににぎやかなのでした。
お面とりんご (新字新仮名) / 小川未明(著)
上窄うえすぼまりになったおけ井筒いづつ、鉄のくるまは少しけてよく綱がはずれ、釣瓶つるべは一方しか無いので、釣瓶縄つるべなわの一端を屋根の柱にわえてある。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
神樣かみさま、どうかおきになつてください。わたしはあなたもよく御承知ごしやうちののんべえ です。わたしがのんべえ なためにいへ生計くらしくるまです。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
雨がしきりなので、かへるときには約束通りくるまを雇つた。さむいので、セルのうへへ男の羽織をせやうとしたら、三千代は笑つてなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
はるさくらにぎはひよりかけて、なき玉菊たまぎく燈籠とうろうころつゞいて、あき新仁和賀しんにはかには、十分間じつぷんかんくるまぶこと、とほりのみにて七十五輌しちじふごりやう
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
『おきぬさん!』とぼくおもはずげた。おきぬはにつこりわらつて、さつとかほあかめて、れいをした。ひとくるまとのあひだる/\とほざかつた。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
けられぬなれば恩愛おんあいおもきにかれて、くるまにはりけれど、かゝるとき氣樂きらく良人おつと心根こゝろねにくゝ、今日けふあたり沖釣おきづりでもものをと
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
古木こぼくやうみにくうでのばして、鐵車てつしやおり引握ひきつかみ、力任ちからまかせにくるま引倒ひきたほさんとするのである。猛犬稻妻まうけんいなづま猛然まうぜんとしてそのいた。
のきいた運転士うんてんしくるまをつけたところが、はたしてそれであつた、かれ門前もんぜんくるまをおりて、右側みぎがわ坂道さかみち爪先上つまさきあがりにのぼつてつた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
ふねおかきますと、宝物たからものをいっぱいんだくるまを、いぬさきってしました。きじがつないて、さるがあとをしました。
桃太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
そのくるま手長蜘蛛てながぐもすね天蓋てんがい蝗蟲いなごはねむながい姫蜘蛛ひめぐもいと頸輪くびわみづのやうなつき光線ひかりむち蟋蟀こほろぎほねその革紐かはひもまめ薄膜うすかは
どうかするとくら木陰こかげ潜伏せんぷくしてよめくるまちかづいたとき突然とつぜんくるま顛覆てんぷくさせてやれといふやうな威嚇的ゐかくてき暴言ばうげんをすらくことがある。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
なんてまぶしくって、人間にんげんがどっさりいて、馬だのくるまだのがはしりまわって、おまけに、さむい身をきるような風が、きまわっているのだろう。
水車すゐしや毎日まいにちうごいてるどころか、きつけるゆきうづめられまして、まるでくるままはらなくなつてしまつたこともりました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
この次の日曜には、行田からいま一いきくるまを飛ばしてやって来たまへ。この間、白滝しらたきの君に会ったら、「林さん、お変りなくって?」と聞いていた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
衞國ゑいこくはふひそかきみくるまするものつみ(一〇七)げついたる、すでにして彌子びしははむ。ひとき、いてよるこれぐ。彌子びしいつはつてきみくるましてづ。
といつて、れいくるまをさしせると、不思議ふしぎにもかたとざした格子こうし土藏どぞう自然しぜんいて、ひめからだはする/\とました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
『一ッくるまなんだらう?』とはおもつたものゝかんがへてるひまもなく、やが砂礫されきあめまどりかゝるとに、二三にんしてあいちやんのかほ打擲ちやうちやくしました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
鉄道病と云っても、私の取り憑かれた奴は、よく世間の婦人にあるような、ふねくるまえいとか眩暈めまいとか云うのとは、全く異なった苦悩と恐怖とを感ずるのである。
恐怖 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
どうかなされた事かと拾八九の赤ら顏紫めりんすと黒の片側帶氣にしつゝめづらしくくるまたのみに來たお三をつかまえて口も八町手も八町走るさすが車屋の女房の立咄たちばなし
うづみ火 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
酒にへてか、よろめく足元危く、肩には、古ぼけた縞の毛布ケツトをかけていたが、その姿から見ると、くるま夫ででもあろうか。年は女よりは三つばかり年長としかさに見えた。
もつれ糸 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
わたし北海道ほくかいだうつても、れにもつたひとはふとはおもひませんわ。わたしはたゞそつと自分じぶんまへのこした足跡あしあとを、くるまほろあひだからでもてくれゝばいゝんですもの。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
それがいかにもくるま兩輪りようりんてゐますから、むかしひと車塚くるまづかといつたのは面白おもしろかただとおもひます。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
午後二時というに上野をでて高崎におもむく汽車に便たよりて熊谷まで行かんとするなれば、夏の日の真盛りの頃を歩むこととて、市中まちなかの塵埃のにおい、うまくるまの騒ぎあえるなど
知々夫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
それぢやアくるませよう、うして浅草あさくさ観音くわんおんさまへれてゆかう。とこれから合乗あひのりで、蔵前通くらまへどほりから雷神門かみなりもんきはくるまり、近「梅喜ばいきさん、これ仲見世なかみせだよ。梅「へゝえ何処どこウ……。 ...
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
五十銭、吉野山見物くるまちん。五十銭、同所寺に参詣費。三十銭、吉野口駅より高野口駅迄切符代。五十銭、昼飯料。二円六十銭、かごに乗賃払。七円五十銭、日ぱい料北室院に上げる。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
和太郎わたろうさんがうしくるまにつけているとき、みんなはまたいろいろなことをいった。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
それはおもわず自分じぶんくるまなんぞのようみずなかげかけ、んでくみんなのほうむかってくびをさしべ、おおきなこえさけびますと、それはわれながらびっくりしたほど奇妙きみょうこえたのでした。
みちは、川の表面ひょうめんのようにたいらで、綺麗きれいで、くるまくつそこをしっかりと、しかし気持きもちよくささえてくれます。これはわたしたちのお祖父様方じいさまがたつくってくださったもののなかでもいちばん立派りっぱなものです。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
翌日一行の諸氏と相分あひわかれ、余は小西君と共にくるまりて前橋にかへりたり。
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
安藤はってから三日めに、くるまを用意して自身じしんむかえにきた。花前は安藤のいうことをこばまなかった。いよいよ家をでるときには主人にも、ややひととおりのあいさつをして、厚意こういしゃした。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
とうふがとうふをつくり、車屋くるまやくるまをひくのと、おなじことではないか。わたしをひょうしょうするというのなら、そのまえに、となりのとうふからひょうしょうしてもらいたいものだね。
ただ、くるまのふるいわから、くぎをぬきとってきただけでした。
くるまきしめく廣小路ひろこうぢ祭物見まつりものみひとごみに
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
木枯こがらしにぶつかつてくるまかな
荷風翁の発句 (旧字旧仮名) / 伊庭心猿(著)
をりからくるま気近けぢか
おもひで (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
くるままはせば、美しく
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
くるまはコロ/\
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
予譲よじょうくるま
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また、ばたんと機械きかいがまわって、ピリッピリッとると、ゴウッとはしってきたくるまきゅうまって、まっていたくるまはしすのです。
はととりんご (新字新仮名) / 小川未明(著)
もんはなれて、やがて野路のみちかゝところで、横道よこみちからまへとほくるまうへに、蒋生しやうせい日頃ひごろ大好物だいかうぶつの、素敵すてきふのがつてた。
麦搗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なほさら五月蠅うるさいとはしくくるまのおとのかどとまるをなによりもにして、それおいできくがいなや、勝手かつてもとのはうき手拭てぬぐひをかぶらせぬ。
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
三人のむかひてゐたが、代助はついくるまあつらへて置くのを忘れた。面倒だと思つて、あによめすゝめしりぞけて、茶屋の前から電車に乗つた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
だが、あんまり威張ゐばれないて、此樣こんくるま製造こしらへては如何どうでせうと、此處こゝまで工夫くふうしたのはこのわたくしだが、肝心かんじん機械きかい發明はつめい悉皆みんな大佐閣下たいさかつかだよ。
そのくるまにはちいさな男の子がっていました。男の子はくるまのみすをかたにかついで、たいくつそうにきょろきょろそとのけしきをながめていました。
一本のわら (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
遙向うの青山街道にくるまきしおとがするのを見れば、先発の荷馬車が今まさに来つゝあるのであった。人と荷物は両花道りょうはなみちから草葺の孤屋ひとつやに乗り込んだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
すなはその(二二)ぼくくるま(二三)左駙馬さふば左驂ささんとをり、もつて三ぐんとなふ。使者ししやかへはうぜしめ、しかのちく。
この某町ぼうまちから我村落わがそんらくまで七車道しやだうをゆけば十三大迂廻おほまはりになるので我々われ/\中學校ちゆうがくかう寄宿舍きしゆくしやから村落そんらくかへときけつしてくるまらず、なつふゆ定期休業ていききうげふごとかなら
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
そこへつき人々ひと/″\そらくるまひとつてました。そのなかからかしららしい一人ひとりおきなして
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
あるひはおちやをひく茶臼ちやうすかたちにもてゐるところがあり、またくるまかたちにもてゐますので、罐子塚かんすづかだとか、茶臼塚ちやうすづかとか、車塚くるまづかだとか、いろ/\のがついてをりますが
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)