鼠賊そぞく)” の例文
「あたりまえさ。轗軻不遇かんかふぐうというやつで、鼠賊そぞくの仲間入りこそしているが、これでもわしの両親は、帯刀御免の名主様じゃった」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鈴川源十郎のうしろには小普請組支配頭青山備前守あおやまびぜんのかみというものがついていて、鼠賊そぞくをひっとらえるのとはこと違い
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
吾をさようの者とも知らず現在敵の御嶽冠者の味方になれとは事可笑おかしや! やおれ、汝ら鼠賊そぞくやから、このように明かした上からは、やわか吾らをがしはせまい。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
今の社会は鼠賊そぞくの寄合で道徳とかいふものは其鼠賊共が、暗中の隠密こつそり主義を保持してゆく為めの規約だ。鼠賊をして鼠賊以上の行為なからしめんが為めには法律といふ網がある。
漂泊 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
よいよい、信徒を荒し霊地を荒す鼠賊そぞくめを、霊地を預かり信徒を預かる院代が匿もうて、五万石の寺格が立つと申さるるならば、久方ぶりに篠崎流の軍学大出し致してつかわそうぞ。
町の鼠賊そぞくが忍び込むとすれば、塀を越す位のことは何んでもありません。
鼠と戦争をするのは覚悟の前だから何疋来てもこわくはないが、出てくる方面が明瞭でないのは不都合である。周密なる観察から得た材料を綜合そうごうして見ると鼠賊そぞく逸出いっしゅつするのには三つの行路がある。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼の精兵は、たちまち、地方の鼠賊そぞく掃滅そうめつしてしまった。朝廷は、彼の功をよみし、新たに、「鎮東将軍ちんとうしょうぐん」に叙した。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「千金の子は盗賊に死せず! 年こそ老いたれこの三太夫、汝ら鼠賊そぞくを相手として、やわか太刀なんど抜くべきか! 賊を捕うるには手段あり、思い知らさん待っていろ!」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「おとぼけ召さるなッ、その衣の袖下かいくぐって逃げ込んだのを、この二つのまなこでとくと見たのじゃ。膝元荒す鼠賊そぞく風情ふぜいを要らぬ匿い立て致さば、当山御貫主かんすに対しても申し訳なかろうぞ」
「——察するところ、鼠賊そぞく猟奇りょうきやからなど、夜行の鬼を躍らすものは、ピオと申す異国の貴人が地下に抱いていると伝えられる宝刀の仕業しわざと思う」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「黙れッ、黙れッ。天とはここに臨んだ錦旗きんきをいう。身のほど知れ、この鼠賊そぞくめ。ただちに、兇器を投げて、降参いたせばよし、さなくば、みじんにいたすぞよ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
或は、世の中の推移にかかわらず世間の抜け目ばかりうかがっているゴマの灰とか、人買ひとかいとかいう、道中荒らしの鼠賊そぞくか。さもなければ、剽悍ひょうかんなるこの地方の野武士か。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天子のみことのりを私して、みだりに朝威をかさに振舞うもの、すなわち廟堂びょうどう鼠賊そぞく、天下のゆるさざる逆臣である。われ、いやしくも、遠祖累代るいだい、漢室第一の直臣たり。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こんな鼠賊そぞくを斬るのに、自己のたましいともする刀をけがすまでもない——というような高踏的な考えからではなく、もっと実際的な、武器の愛護を念とするからであった。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
不審な目をみはって、金吾はまずこの唐突な町人に一べつを与え、おもむろに考えたことには、ははあ此奴こいつ、四ツ目屋の露地から出てきたといえば、或いは鼠賊そぞくうちの一匹ではないか。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「だまれッ、罪を裁くは、領主の司権じゃ。汝等如き鼠賊そぞくが掟呼ばわりは片腹いたい」
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
西羗せいきょう鼠賊そぞくが、権者の鎧甲がいこうを借りて、人に似たる言葉を吐くものかな。われはただ今日を嘆く。いかなれば汝のごとき北辺の胡族えびすの血を、わが年来の晃刀こうとうに汚さねばならぬか——と。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見ているんですか。時は今ですぞ、宮廷のがん社稷しゃしょく鼠賊そぞくども、十常侍の輩を一匹残らず殺してしまわなければいけません。この機を逸したら、再びほぞを噛むような日がやってきますぞ
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが、この怒りは、卑劣だとかあざむかれたとか、対人的に怒っているのではない。元より虫けらのような鼠賊そぞくと思いながら、社会的にゆるしておけない気持がする。いわゆる公憤なのである。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「逃げるのではない。我は漢の名将、汝は逆門の鼠賊そぞくやいばけがれをじるのだ」
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あいやお武家、一人や半分の鼠賊そぞくは追うことはござらぬ」
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
碧眼へきがんの小児、紫髯しぜん鼠賊そぞく、思いあがるを止めよ」
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鼠賊そぞくども! はかったなっ」
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)