髮結床かみゆひどこ)” の例文
新字:髪結床
平次が仲間に奉加帳ほうがちやうを廻して足を洗はせ、田圃の髮結床かみゆひどこの株を買つて、妹のおくめと二人でさゝやかに世帶を持つてゐたのでした。
餘事よじだけれど、大火たいくわに——茅場町かやばちやう髮結床かみゆひどこ平五郎へいごらう床屋とこやがあつて、ひとみなかれを(床平とこへい)とんだ。——これけた。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
したの又かれ無學文盲むがくもんまうの何も知らぬ山師醫者の元締もとじめなりなど湯屋ゆやの二かい髮結床かみゆひどこなどにて長庵の惡評あくひやうきく夏蠅うるさきばかりなれば果はいのちの入ぬのか又はしにたく思ふ人は長庵のくすり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
新年ねんあたまこしらえやうといふになつて、宗助そうすけひさぶり髮結床かみゆひどこ敷居しきゐまたいだ。くれ所爲せゐきやく大分だいぶんでゐるので、はさみおとが二三ヶしよで、同時どうじにちよき/\つた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
おな新開しんかいまちはづれに八百髮結床かみゆひどこ庇合ひあはひのやうな細露路ほそろぢあめかさもさゝれぬ窮屈きうくつさに、あしもととては處々ところ/″\溝板どぶいたおとあなあやふげなるをなかにして、兩側りようがはてたる棟割長屋むねわりながや
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
何時にもなく羽織を引つかけた平次、それから下谷一圓を廻つて髮結床かみゆひどこ、湯屋、町醫者と、根氣よく訪ねました。
彼方此方かなたこなたと見物して來かゝる處に髮結床かみゆひどこの前にて往來の人が立噺たちばなしをなし居たるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
安全剃刀のなかつた時代、亭主が度々髮結床かみゆひどこへ行つて、將棋しやうぎを指してばかり居られなかつた社會の、それは親しみ深い、つゝましやかな風景の一つだつたのです。
髮結床かみゆひどこで、——あつしと丁度互先たがひせんといふですよ」