風評うわさ)” の例文
これは上野介が浪士の復讐を恐れて、実子上杉弾正大弼綱憲だんじょうだいひつつなのりの別邸にかくまわれているというような風評うわさがあったからにほかならない。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
数間かずまじいやのことは、ツイうっかりしてまだ一もお風評うわさいたしませんでしたが、これは、むかし鎌倉かまくら実家さとつかえていた老僕ろうぼくなのでございます。
平兵衛の行方不明は、もう一つの、そしてこれが終いの、日本橋の神隠しとして風評うわさのうちに日が経って行った。
お今のことがまだ思いれずにいる、その男の縁談のまだ紛擾ごたついている風評うわさなどが、お今の耳へも伝わっていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
此邊このへんことは、本國ほんごくでもひと風評うわさのぼり、きみにも幾分いくぶん御想像ごさうぞういたらうが、はたして如何いかなる發明はつめいであるかは、其物そのものまつた竣成しゆんせいするまでは、たれつてものはない、わたくし外國ぐわいこく軍事探偵ぐんじたんてい
日比谷公園「唄う鶴の噴水」の会場から皇帝を誘拐したと風評うわさされる安亀一派の追求を開始し、外事課は十二月初旬以来の来航者並びに在留外人の行動を一人ずつ虱つぶしに調査することになった。
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
その庭男が癩病筋らいびょうすじだったというこんで院長の脚の病気も何だか知れやしないて風評うわさをする人もあるそうで……。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
その風評うわさがいよいよ事実となって現れ、八百八町に散らばる御用の者が縁に潜り屋根を剥がさんばかりの探索を始めてからまる一月、天をけるか地に這うか
そんな風評うわさみみにするわたくしとしては、これまでの修行場しゅぎょうば引越ひっこしとはちがって、なんとなくがかり……幾分いくぶん輿入こしいまえ花嫁はなよめさんの気持きもち、とったようなところがあるのでした。
が、それは風評うわさだけに止まって、主として本所の邸に住んでいることが分ったので、おいおい同志が出府してくるころには、与五郎も谷町の店をしまって、前原の米屋の店へ同居することになった。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
それから二人の間には、小野の風評うわさが始まった。お国はあの人と知っているのは、もう二、三年前からのことで、これまでにも随分いい加減なうそを聞かされた。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
洲崎の女を落籍ひかすとか、落籍して囲ってあるとかいう風評うわさが、お庄らの耳へも伝わった。どっちにしても叔父が女に夢中になっていることだけは確かであった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ほどのいい軽い洒落しゃれなどを口にしながら、二人はちびちび飲みはじめたが、会社の重役や、理事の風評うわさなども話題に上った。女遊びの話も、酒の興を添えていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
小林の妾などと、女同士寄って、良人の風評うわさなどしあうとき、お増はいつもそう言っていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
いつもよく来る中野の隊の方の、若い将校連の風評うわさなども出た。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)