あぎと)” の例文
大蛇だいじゃあぎといたような、真紅まっかな土の空洞うつろの中に、づほらとした黒いかたまりが見えたのを、くわの先で掻出かきだして見ると——かめで。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
両の肩怒りてくびを没し、二重ふたえあぎと直ちに胸につづき、安禄山あんろくざん風の腹便々として、牛にも似たる太腿ふとももは行くに相擦あいすれつべし。顔色いろは思い切って赭黒あかぐろく、鼻太く、くちびる厚く、ひげ薄く、まゆも薄し。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
きらり/\と四振よふり太刀たち二刀ふたふりづゝをななめに組んで、彼方かなたあぎとと、此方こなたの胸、カチリと鳴つて、ぴたりと合せた。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
其のとんがつたあぎとのあたりを、すら/\となびいて通る、綿わたの筋のかすかに白きさへ、やがてしもになりさうなつめたい雨。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
馬は売ったか、身軽になって、小さな包みを肩にかけて、手に一こいの、うろこ金色こんじきなる、溌剌はつらつとして尾の動きそうな、あたらしい、そのたけ三尺ばかりなのを、あぎとわらを通して、ぶらりと提げていた。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
して、提灯ちやうちんあぎとに、すさまじいかげうごめくのは、やら、なにやら、べた/\とあかあをつたなかに、眞黒まつくろにのたくらしたのはおほきな蜈蚣むかでで、これは、みやのおつかはしめだとふのをかねいた。
月夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
明は少し俯向うつむいた。せたあぎとに襟狭く
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)