面食めんくら)” の例文
馬鹿ばかげた笑い方をし、うれしそうに眼を輝かしながら、淫逸いんいつな話をつづけるので、そういう会話の中に出ると彼は面食めんくらってしまった。
博士が、面食めんくらうのもむりではなかった。帆村は、また冷汗をながした。そして博士に、残る微量のX塗料のことを説明したのであった。
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それも狂い方が、あんまり烈しいので、がんりきほどのものが、すっかり面食めんくらってしまったのは無理もありますまい。そこでやむなく
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
こんな手紙と原稿とを突然だしぬけに投げ付けられては、私も少しく面食めんくらわざるを得ない。宜しく頼むと云われても、これはほどの難物である。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
こうなると面食めんくらって、見付けられず、手探りに探っている間に、何度頭を金剛杖でなぐられたか、数知れず、後には気絶して突伏してしまった。
怪異暗闇祭 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
余はこの日かく改まった委嘱いしょくを受けようとは予期しなかったので、少し面食めんくらいながらも、謹んでその話を聴いていた。
子規居士と余 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
私は大に面食めんくらつた。何しろ昨日今日北国の片田舎から出て来たばかりで、まだ京の市街まちの東西も知らず、言葉も碌に聞き取れぬ時分のことだつたのだ。
乳の匂ひ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
流石さすがに名校長だと思ったが、あの男は単に世渡りが上手なんだ。先方むこうから先に言い出して、僕を面食めんくらわせた」
首切り問答 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
やがてこのあとへ顔を出す——辻町糸七が、その想う盾の裏を見せられて面食めんくらった。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
明智が変なことを云い出したので、波越氏はちょっと面食めんくらった形である。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
文学はこのあわただしさに耐え兼ね、面食めんくらった形である。
大衆文芸作法 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
初は私達子供は面食めんくらって了った。
回想録 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
ともかく相当の心得ある博徒と見えて、切口上で賭博打ばくちうちの言葉手形を本文通り振出したから、がんりきの百蔵もいよいよ面食めんくらいました。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
冬子の声がやや鋭く聞えたので、市郎もいささ面食めんくらって思わずその顔をきっると、露の如き彼女かれの眼は今や火のように燃えていた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
が、面食めんくらつてるから、このこゑに、ほつとして、すこしばかりこゝろ落着おちついた。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
と私はひそかに期しているところを突如いきなり指されて尠からず面食めんくらった。
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
二人の美しい女友だちのやり方に、しばしば面食めんくらった。
さすがのお絹も、忠作のたずねて来たことが、あまりに意外であったものだから、全く面食めんくらってしまったようでした。
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
呼び起してこの出来事を報告すると、大尉自身も面食めんくらって早々にここへ駈付けて来た。
二階から (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
真新しい白い塔婆で、すっくりと立ってたのにはちょっと面食めんくらいました。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と芳夫さんは飛び立たないばかりに面食めんくらった。それも道理
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
なんとなく浮かぬかおで、すごすごとまたここまで舞い戻って来たということが、白雲をして面食めんくらわせることほど、意外千万な引合せであったからです。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
面食めんくらったぜ。しかし咄嗟とっさの嘘にしちゃ巧かったろう?」
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
論より証拠、引きつづいての前記の文句を突然うたい出されて、面食めんくらわないものがありますか。
大菩薩峠:28 Oceanの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
えらい目に会った。英語でやるぜ。面食めんくらったよ」
恩師 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
仏頂寺へ会釈えしゃくもなく、わが物気取りで弁慶を叩きはじめたから、仏頂寺も全く面食めんくらった形で
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
まず自分の身の上の安房あわの国、清澄山からはじめて、一代記を立てつづけに喋り出されたものですから、さすがの金助も面食めんくらいの、立てつづけに喋りまくられてしまいました。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
道庵に頭からケシ飛ばされる時も、米友は面食めんくらってしまうが、こうして猫撫声で出られる時も、気味が悪くてたまらない。もう少し前へおいでと言われて、米友が妙にハニカンでいると道庵は
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
これは実に、誰にも分らない雲助の振舞であり、今日まで、脱線と面食めんくらいにかけては、かなり腕にも頭にも覚えのあり過ぎる道庵自身すらが、全く解釈のできない、非常突発の行為でありました。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
すっかり面食めんくらってしまいましたね。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ちょっと面食めんくらうかも知れない。
大菩薩峠:28 Oceanの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
の声に面食めんくらって
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)