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雪踏
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せった
ふりがな文庫
“
雪踏
(
せった
)” の例文
雪踏
(
せった
)
をずらす音がして、
柔
(
やわら
)
かな
肱
(
ひじ
)
を、唐草の浮模様ある、
卓子
(
テイブル
)
の
蔽
(
おおい
)
に曲げて、身を入れて聞かれたので、青年はなぜか、困った顔をして
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「
心配
(
しんぺい
)
するな」笑いながら、さっさと足を進めると、なるほど
河岸
(
かし
)
ッぷちの闇から、チャラリ、チャラリ……と
雪踏
(
せった
)
を
摺
(
す
)
る音。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
勝も附いて来て、赤い緒の
雪踏
(
せった
)
を脱いで上った。僕は先ず
跣足
(
はだし
)
で庭の
苔
(
こけ
)
の上に飛び降りた。勝も飛び降りた。僕は又縁に上って、尻を
褰
(
まく
)
った。
ヰタ・セクスアリス
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
照降町は下駄や
雪踏
(
せった
)
を売る店が多いので知られていたが、その中でも駿河屋は旧家で、手広く商売を営んでいた。
半七捕物帳:57 幽霊の観世物
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
三吉は
一旦
(
いったん
)
脱いだ白シャツに復た手を通して、服も着けた。正太は紺色の長い絹を
襟巻
(
えりまき
)
がわりにして、
雪踏
(
せった
)
の音なぞをさせながら、叔父と一緒に門を出た。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
▼ もっと見る
小さく結んで
雪踏
(
せった
)
の音を川の流れと交って響かせて行く若い女の様子を仙二は恐ろしい様な気持で見た。
グースベリーの熟れる頃
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
傍
(
わき
)
に置いた主人の
雪踏
(
せった
)
とお嬢様の雪踏と自分の福草履三足一緒に
懐中
(
ふところ
)
へ入れたから、飴細工の狸見たようになって、梯子を
上
(
あが
)
ろうとする時、
微酔機嫌
(
ほろよいきげん
)
で少し身体が
斜
(
よこ
)
になる途端に
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
上方へ修行に上り
候
(
そうろう
)
、
雪踏
(
せった
)
を
穿
(
は
)
き候まま、旅支度も致さず参りしこと故、相なるべくはお通し下され候様に、と言ったら、
番頭
(
ばんがしら
)
らしきが言うには、御大法にて手形なき者は通さず
大菩薩峠:39 京の夢おう坂の夢の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
話すならもっと大きな声で話すがいい、また内所話をするくらいなら、おれなんか誘わなければいい。いけ好かない連中だ。バッタだろうが
雪踏
(
せった
)
だろうが、非はおれにある事じゃない。
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
熊の皮の甚兵衛を着て、もんぺと
雪踏
(
せった
)
をはいているのである。賢彌に近づくと
岩魚
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
「せきだ」は
雪踏
(
せった
)
のことである。『言海』には雪踏の訛としてある。卯の花の咲いている里の垣根に雪踏が干してある、というだけのことに過ぎぬが、これは考えて後にはじめて得る配合ではない。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
椅子と椅子と間が
真
(
まこと
)
に短いから、袖と袖と、むかい合って接するほどで、
裳
(
もすそ
)
は長く足袋に落ちても、腰の高い、
雪踏
(
せった
)
の
尖
(
さき
)
は
爪立
(
つまた
)
つばかり。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「ばかにするな、はははは」と、孫兵衛、くすぐったい笑いを残して、
雪踏
(
せった
)
の音、チャラリ、チャラリ……と闇に消える。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
霜どけ道に
雪踏
(
せった
)
をすべらせて、曽根が小膝を突いたところを、伝蔵は突き放して一目散に逃げてしまったそうです
半七捕物帳:61 吉良の脇指
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
お玉は
草帚
(
くさぼうき
)
を持ち出して、格別
五味
(
ごみ
)
も無い格子戸の内を丁寧に掃除して、自分の
穿
(
は
)
いている
雪踏
(
せった
)
の外、只一足しか出して無い駒下駄を、右に置いたり、左に置いたりしていた。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
と云いながら袖を
打
(
ぶ
)
っ
払
(
ぱら
)
って
雪踏
(
せった
)
を脱ぎ捨て、
跣足
(
はだし
)
の儘駈け出す。
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
悪い所へ、旅川周馬が戻ってきたのではないか、その時、
塀
(
へい
)
の向うに忍びやかに、チャラリ、チャラリ……と
雪踏
(
せった
)
の音。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
手巾
(
ハンケチ
)
をそのまま日傘の柄に持ち添えて、気軽に
雪踏
(
せった
)
ちゃらちゃらと、鴨川が根岸の家へ急いだのであった。
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
雪か
霙
(
みぞれ
)
か雨か、冷たいものに顔を撲たれながら、彼は暗い屋敷町をたどってゆくうちに、濡れた路に
雪踏
(
せった
)
を踏みすべらして
仰向
(
あおむ
)
きに尻餅を搗いた。そのはずみに提灯の火は消えた。
半七捕物帳:27 化け銀杏
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
千草
(
ちくさ
)
の股引白足袋に
雪踏
(
せった
)
を
穿
(
は
)
いた小僧が腮を押え泣声を出して
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
歩きださぬときゃつの眼が、またうるさくつけてくるだろうと、それをまぎらす足どりである。だから、いたって悠々としたもの、
雪踏
(
せった
)
の
裏金
(
うらがね
)
も鳴らぬ程に。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
やはり普通の
帷子
(
かたびら
)
をきて、大小に
雪踏
(
せった
)
ばきという拵え、しかし袴は着けていません。
三浦老人昔話
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
万太郎の右足が上がって、
雪踏
(
せった
)
の裏でカラリッと大地へ落とされた物を見ると、それは
銀磨
(
ぎんみがき
)
きの丸棒に
反
(
そ
)
りの打った鉢割という武器で、やはり捕物道具のひとつ。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
だのに——万太郎が
雪踏
(
せった
)
を鳴らして、ぶらりぶらり、さなきだに感覚的な盗賊たちの目をひくような彷徨をやっていたひには堪ったものではない、ぶちこわしです。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
黒い塀の所へ黒い人間が、ジッと立っていたのだから、ウッカリ気がつかなかったのも当然で、
茶柄
(
ちゃづか
)
の大小、
銀鐺
(
ぎんこじり
)
、骨太だがスラリとして、
鮫緒
(
さめお
)
の
雪踏
(
せった
)
をはいている
背恰好
(
せかっこう
)
。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
高津筋の辻から、お十夜孫兵衛、チラリ、チラリと
雪踏
(
せった
)
を鳴らして曲ってきた。
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
娑婆
(
しゃば
)
の夜景にのびのびとして、
雪踏
(
せった
)
を軽く擦りながら町の軒並を歩きますに、茶屋の赤い灯、
田楽
(
でんがく
)
屋のうちわの音、
蛤鍋
(
はまなべ
)
、
鰻屋
(
うなぎや
)
の薄煙り、
声色屋
(
こわいろや
)
の
拍子木
(
ひょうしぎ
)
や影絵のドラなど、目に鼻に耳に
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、
雪踏
(
せった
)
をすって、石段を下りはじめた。
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、先へ
雪踏
(
せった
)
を鳴らして、歩き出した。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“雪踏(
雪駄
)”の解説
雪駄、雪踏(せった)は、竹皮草履の裏面に皮を貼って防水機能を与え、皮底の踵部分に尻鉄がついた日本の伝統的な履物(草履)の一種で、傷みにくく丈夫である。また、湿気を通しにくい。
(出典:Wikipedia)
雪
常用漢字
小2
部首:⾬
11画
踏
常用漢字
中学
部首:⾜
15画
“雪踏”で始まる語句
雪踏穿